第33章 すれ違い、こじれ始める。
ガチャッ
「カノそろそろ飯にしよ〜って…電話中か、悪い」
「ううん、もう平気だよ兄さん」
電話を終えたマドカが戻ってくるとカノトもソファーから立ち上がる。
「それじゃあマイキーくん」
《…なぁ、後で電話していい?》
「…すみません。今日は早めに寝ようと思ってるんです。また今度にしましょう」
《そっか…分かった。オレこそ無理言ってごめんな。じゃあ…少し早いけどおやすみ、カノ。》
「はい、おやすみなさい」
微妙な空気感を残したまま、マイキーとの通話を強引に終わらせた。
「……………」
「電話平気だったのか?佐野からだろ?」
「もう平気」
パチンッと片手で携帯を閉じる。
「実家には明日行くことになった」
「そっか」
「…大丈夫か?」
「兄さんは心配性だなぁ。本当に大丈夫だよ。あの連中に何を言われても堪えられる。私だってもう、あの頃の泣き虫な私じゃないんだから」
「バーカ、中学生はまだ子供の範囲だ。でも…強くなったな」
「(そうだよ。私、強くなったんだよ…兄さん。大切なものを守る為に強くならなきゃいけないの。)」
泣き虫な友人と一緒に
最悪な未来を変えるために
簡単に心を折ったらダメなんだ
✤ ✤ ✤
翌日────。
「お待ちしておりました」
黒の高級車からカノトとマドカが降りて来る。年配の女性が掌を重ねて頭を下げた。
「おー美代子さん、元気そうだな」
「久しぶり、美代子さん」
「お久しぶりでございます。お嬢様、坊ちゃん。ずっとお会いできるのを心待ちにしておりましたよ」
目に涙を潤ませながら美代子は微笑む。
「お嬢様…ご立派になられて…」
「全然立派じゃないよ。14になっても兄さんに甘えてばかりで…」
「妹は兄貴に甘えるもんなんだよ。てか美代子さん、もう全員揃ってんの?」
「はい。大旦那様と若旦那様は応接間でお待ちです。他の皆様はそれぞれの客間でお寛ぎ中でございます」
「(…変わってないな、この家も。)」
数年ぶりに自分の家に帰ってきた。屋根のある和風門を潜り、砂利を敷き詰めた飛び石の上を歩く。
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