第33章 すれ違い、こじれ始める。
「いいのか?あの家には散々苦しめられたんだぞ?アイツらのせいでお前は自由を失ったんだ。また心無い言葉で傷付くかもしれない。それでも…俺と一緒に来るのか?」
「うん…私はもう逃げる訳にはいかないの」
「逃げてもいいんだ。無理してあの家に戻る必要はない。アイツらに酷い事を言われて傷付いて泣くお前を俺は見たくないんだ」
「兄さんは…小さい頃から私を守ってくれたね。辛い毎日で逃げ出したいって思う日もあった。でもね?そんな地獄のような日常で、私が逃げ出さなかったのは…兄さんがいてくれたからなんだよ」
どんなに泣いても
どんなに弱音を吐いても
「兄さんの存在が私の"弱さ"に勇気を与えてくれたの。それに家を出た今でもこうして私の傍で守ってくれてる。でももう…守られてばかりでいる私はおしまいにしないと」
「カノ……」
「この先どんな運命が待ち受けようとも、兄さんのことは何があっても絶対に私が守る」
未来のマドカはどの世界でも必ず命を落としてしまう。どんなに運命を変えても、未来で生きる道は閉ざされる。だからこそ、失いたくないのだ。もう守られてばかりの自分は終わりにしないと。
「なんか…たまに大人みたいな顔するよな」
「え!?」
「今のお前、ちょっと大人に見えた。おかしいよな、俺の方が年上なのに、お前のこと頼もしいって思っちまった」
「(危ない…バレるとこだった。)」
「…もう腹括ってくるだもんな。顔見せたらすぐに帰ろう。あんな家、長居する理由もねぇし、あのクソじじいのどうでもいい無駄話に付き合うのも面倒だしな」
「兄さん…」
「家に電話してくる」
ポンポンッと頭を優しく叩き、マドカは携帯を片手にリビングを出て行った。
「(正直…あの家には近付きたくない。でも兄さんに守られてばかりはダメだ。今度は私が兄さんを守る番だ。)」
ソファーに座り、一息つく。
「(そういえば…温泉旅行の日にち、そろそろ決めないと。マイキーくん、電話出てくれるかな…)」
マイキーの番号を押す。
《もしもしカノ?》
「こんばんは。今電話しても平気ですか?」
《全然へーき。どうした?》
優しい口調で語りかけられる。
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