第33章 すれ違い、こじれ始める。
「ただいまー」
「おかえり」
大学から帰宅したマドカはキッチンに立つカノトに笑って出迎えられる。
「お!めっちゃ美味そうな匂いがする!」
「今日はハンバーグにしてみたよ」
「デミグラも手作りじゃん」
「材料があったから作ってみた」
「俺の妹マジ家庭的!」
リビングに入った瞬間に香ばしい匂いが漂い、キッチンに行けば、二人分のお皿には茹でた温野菜とカノトが手作りしたハンバーグが乗っていた。デミグラスソースも一から作り、ハンバーグの上にかけられている。
「早く帰って来てよかった〜♪」
マドカは嬉しそうに上着を脱ぎながらリビングに戻る。
「ねえ兄さん」
「ん?」
「今日実家から電話って掛かってきた?」
「!もしかしてお前のとこにも掛かって来たのか?」
「うん」
「そうか…」
「行かないよね?」
不安げに聞くとマドカが振り向く。
「お前は行かなくていい」
「え?兄さんは?」
「俺は…行ってくるよ」
「っ、どうして!?」
マドカなら行かないと言ってくれると思っていた為、返ってきた言葉に驚きを隠せない。
「だって俺まで断ったらさ、あの連中の怒りの矛先がお前に向かうだろ?」
「!」
「昔からアイツらはお前のことを快く思ってない。その中で俺まで顔を出さなかったらきっとアイツらはお前を責める。"また我儘を言って困らせたんだろう"とか何とか理由をつけてお前を悪者にするんだ」
「(あの連中の言いそうなことだ…)」
「そんな思いをもうしてほしくないから俺が一人で行ってくる。お前のことは上手く誤魔化しておくから心配すんな」
兄さんは…私のことを思って…
私が傷つかないように
敢えて一人で行こうとしてるんだ
なのに…私は逃げたままなの?
子供の頃のトラウマから抜け出せずに
いつまでも逃げ続けてていいの?
兄さんだけにこの先もずっと背負わせるの?
「…そんなのダメ。兄さんだけを一人で行かせられない。あの連中は兄さんにも何か言うかもしれない。だから…私も一緒に着いてく」
「けどお前…」
マドカは心配そうにこちらを見ている。
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