第33章 すれ違い、こじれ始める。
「なん、で……」
ずっと手の中で震えている携帯の画面を見つめながら驚いた表情で固まる。
「(どうしてあの家から!?)」
電話の相手は実家からだった。
「今更…何の用なの?あの家とはもう縁を切ったはずなのに」
不快そうに顔を歪め、ずっと出ないでいるとバイブの震えは止まり、着信が切れた。
ホッと安堵の息を漏らす。その直後に1件の留守電が通知される。
「留守電なんて入れないでよ…」
うんざりするように吐き捨て、残された留守電を一応、聞くだけ聞くことにした。
"留守電が1件です"
《尚登様が海外から一時帰国なされました。明日、宮村家の関係者が集まります。勘当した身ですが尚登様がお二人にもお会いしたいとおっしゃっています。なので一度、望様とご一緒に宮村家にお戻りください。》
ピーッとメッセージが終了した。
「……は?」
随分と素っ気ない使用人の残した留守電の内容を聞いて混乱した。
「(今…なんて言った?家に…戻れ?)」
おじい様が…帰ってきてる?
宮村家の現当主であり、『大旦那様』と呼ばれる尚登は普段は海外で暮らしており、時折仕事の合間を縫っては日本に帰国し、宮村家に住み着いている。
「ふっざけんな!!」
ギリッと歯を噛み締め、苛立ちを募らせたカノトは携帯を床に向けて投げつける。幸い、投げた場所には柔らかいクッションが置いてあり、故障は免れた。
「今まで放置してたくせにおじい様が帰って来たから顔を見せに戻って来いって!?冗談じゃない!!相変わらず身勝手な連中で腹が立つ…!!」
子供の頃のトラウマから実家とは距離を置いているカノトは怒りを抑えられず、声を荒らげる。
「絶対に行かない。行くもんか。あの家は散々、私と兄さんを苦しめたんだ。あいつらの思い通りに動いてたまるか…!」
綺麗な紫色の瞳が憎しみに染まる。
「…でも兄さんはどうするんだろう。きっと兄さんにも連絡がいってるはず。はぁ…少し落ち着こう」
投げ捨てられた携帯を拾い上げる。
「夕飯の支度、しようかな…」
最終的な判断はマドカに委ねられる。カノトはマドカが帰って来るまで夕飯の支度に取り掛かった。
.