第32章 好きな人の初恋の人
「(違うのドラケンくん。私には分かる。三人とも確かに彼女に会えて嬉しそうな声だった。でも…マイキーくんだけが、少しだけ…声の高さとかトーンが違ったの。)」
好きな人のことだから分かる
「(そっか…彼女に会えて嬉しかったんだね、マイキーくん。でも…抱きしめてる途中で他の女の子の所に行くのは寂しいなぁ。)」
泣きそうになるのをグッと堪え、小さく笑う。
「そうだ。これ、落としたでしょう?」
「あ…パスケース…拾ってくれたんですね。ありがとうございます」
海凪からパスケースを受け取る。
「なぁ海凪、久しぶりに俺らと走りに行かねぇ?ケツ乗せてやるからさ」
「お!いいな三ツ谷!賛成!」
「…いいの?アタシ…みんなの前から何も告げずに黙っていなくなったのよ?恨んでるんじゃないの?それなのに…許してくれるの?」
「当たり前だろ。つーか恨んでねーよ。オマエがいなくなったのはビックリしたけどな」
「許すも何もお前が無事だったことが知れて安心してんだ。戻ってきてくれてありがとな海凪。」
「ほら!いつまでシケた面してんだよ!また一緒に走りに行こうぜ!」
「うん」
海凪は嬉しそうに微笑んだ。
「カノはどうする?」
「え?」
「一緒に行くならオレの後ろ乗せてやるけど」
「(誘ったのはマイキーくんなのに…)」
何で彼女を優先するの?
悔しくて苛立ちが募る。
「いえ…遠慮しておきます」
「何で?」
「ほ、ほら、せっかく再会できたのにそこに僕が水を差すのも悪い気がして。なので僕のことは気にせずに四人で行ってきてください」
「じゃあ家まで送る」
「だ、大丈夫です…!一人で帰れます!」
「ダメ。心配だから送る。」
「本当に大丈夫ですから。まだ昼過ぎだし、帰り道もちゃんと人が多い所を通ります」
頑なに送ると言い張るマイキーをなんとか説得させようとする。
「…本当に人が多いとこ通って帰れよ?変な奴に声かけられても無視して走って逃げろ。つーかそうなる前にすぐオレに連絡して。分かった?」
「……はい」
マイキーは納得してない様子だったが、二人の仲をこれ以上見てるのが辛くて早急に話を切り上げる。
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