第32章 好きな人の初恋の人
「なんだ?」
「碓氷さんは…マイキーくんにとって───どういう存在なんですか?」
「!」
顔を見ずに告げた瞬間、微かに驚いて目を見開いたドラケンがどこか気まずそうに視線を逸らした。
「あー…お前に嘘ついてもどうせバレると思うから正直に言うわ」
「……………」
「海凪はマイキーの…"初恋の女"なんだ」
「っ、」
ずしりと心が重くなった。
「初恋の…?」
「けど勘違いすんなよ。今はマジでお前一筋だし、マイキーも今となっては海凪への想いも消えてる。だから初恋の女"だった"。アイツの初恋がお前じゃなかったのはショックだと思うが変な方に深く考えんな」
「(マイキーくんが彼女の…)」
「おい?聞いてんのかカノ?」
「……はい」
正直ドラケンくんの言葉が耳に入らない
私だけかと思ってた
マイキーくんが好きになったのは
私だけなのかと……
「(自惚れだったのかな。そりゃマイキーくんはカッコイイからモテるし、好きになる子はたくさんいるだろうけど…)」
まさかマイキーくんが"好きになる方"とは…
「(どうしよう…ショック過ぎて…あんな嬉しそうなマイキーくんを見ちゃったら…)」
ぐるぐると頭の中が混乱する。
「(コイツ…変な方に考えてんな。あーあ、顔が真っ青だし、パニクってるし…)」
ドラケンは"やっぱり言うべきじゃなかったか"と後悔の溜息を吐く。
「カノ」
「え?あ、はい…?」
「…ったく。泣きそうな顔してんじゃねーよ。"だった"っつったろ?マイキーはもう海凪に対して一切恋愛感情はねぇんだよ。こっちが引くくらい、お前にゾッコンなんだからさ」
「でも…ドラケンくん…」
「ん?」
「彼女を見つけた時のマイキーくんの声が…私に向けられたことのないような弾んだ声だったんです。とても嬉しそうで…なんだか…マイキーくんが遠くに行ったようで…」
「バーカ。いらねぇ心配すんな。何年も海凪は行方をくらましてた。そのアイツが数年ぶりに俺らの前に現れたんだ。マイキーだけじゃねえ。俺や三ツ谷だって嬉しそうに声が弾んでただろ」
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