第32章 好きな人の初恋の人
「あ!そうだ!カノ!」
「!」
マイキーに呼ばれ、顔を上げる。
「紹介するな。コイツは碓氷海凪。ガキん頃からの付き合いで、東卍の設立には直接関わってねーけどケンチンや三ツ谷や場地、パーや一虎のことも良く知ってんだ」
「あ…そう、なんですね」
そんなに嬉しそうに話さないで…
「コイツ小柄に見えて実は喧嘩めっちゃ強いんだぜ?昔は一つの暴走族を一人で潰しちまったくらいなんだ」
「ちょっとケンちゃん。恥ずかしいからそれは言わないでって言ったじゃない」
「確かに…碓氷さんの喧嘩っぷりはとても素人じゃないなとは思いました」
「あれ?お前海凪が喧嘩してるとこ見たことあるのか?」
「あー実は…彼女と会うのは二回目なんです。前に困っていたところを助けてもらって。その時に少しだけ…」
三ツ谷に不思議そうに聞かれ、取り繕った顔でへらっと笑う。
「そうなのか?」
「アタシは覚えてないんだけどね」
「でも碓氷さんの蹴りは…マイキーくんに似てるなって思いました」
「海凪はガキの頃からオレの道場通ってたからな。そこでオレと組手とかもしてたし…」
「アタシに一回も勝てなかったけどね」
「はぁ!?それはガキん時の話だろ!!今ならぜってーオマエに負けねぇし!」
「どーかしらね」
海凪は揶揄うようにニヤリと笑う。
「なら勝負しようぜ!」
「いいわよ。アタシだって負けない自信あるし。万次郎なんてコテンパンにしてやるから」
「言ったな?ぜってー泣かす!」
「……………」
二人の仲の良さを見ていると胸の奥からドロドロとした嫌な感情がせり上がる。それにハッとして小さく首を振った。
「(私と碓氷さんに対する接し方が全然違う。何だろう…あっちが素のマイキーくんに思えちゃう。あぁ…やだな。泣きそう。)」
「…カノ?どうした?」
「ドラケンくん…一つ教えてください」
楽しそうに話している二人を見ながらドラケンに言う。
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