第32章 好きな人の初恋の人
「っ………!!」
その瞬間、温もりがあった体から体温が消えた。驚きで小さく息を呑み、カノトの横を通り過ぎて行ったマイキーは、ドラケンと三ツ谷と共に海凪の元へと駆け出した。
「海凪!!」
マイキーが嬉しそうな顔で海凪の名前を呼ぶ。カノトは驚いた顔で固まったまま、その場に立ち尽くす。
「オマエ…今まで何処に行ってたんだよ!?」
「何で急に俺らの前から消えたりした!?」
「みんな心配してたんだぞ!」
「うん…心配かけてごめん。少しこの街を離れてた。こっちに戻って来たのは最近。万次郎もケンちゃんもタカちゃんも…あの頃と全然変わってないね」
「っ……心配させんな」
「万次郎…」
「あれっきりお前の姿が見えなくなって、俺ら全員でお前を探したんだぞ。でもどこ探してもお前はいなくて…」
「勝手にいなくなってごめんね。約束も…破ってごめんね、ケンちゃん」
「いい…お前とまたこうして会えたんだ。生きてるって分かっただけで一安心だよ」
海凪は申し訳なさそうに笑う。
「タカちゃん…昔着てた可愛いワンピース、どこかに引っ掛けちゃって破れちゃった。せっかく作ってくれたのに台無しにしてごめんね」
「そんなのいくらでも作ってやる。お前が着たい服は全部、俺が仕立ててやる。あれは海凪の為の服なんだから。だから謝んなよ」
「うん…ありがとう」
四人が感動の再会に浸ってる中、一人だけ置いてきぼりになったカノトはズキズキと痛み出す胸を押さえながら、困惑した顔で三人を見つめている。
「(四人は知り合い…?碓氷さんは…マイキーくん達を知ってるの?…あれ?彼女ってあんな優しい口調だったっけ?)」
私と話してる時は刺々しくて
冷たいくらいだったのに
三人と話す時は
その刺々しさが抜けて
笑顔まで見せている
「(そんなことより…)」
あんな嬉しそうな顔をしたマイキーくん
初めて見た
彼女の名前を呼ぶ声も
本当に嬉しそうだった
「(私を離して彼女のところに行くとは思わなかった…)」
ドクンドクンと心臓が嫌な鳴り方をする。
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