第32章 好きな人の初恋の人
「"海"に"凪"かぁ。じゃあ貴女の周りにはたくさんの人が集まるんですね」
「…どういう意味?」
「"海"は【多くの人や物が集まるところ】で"凪"は【風がやみ波が穏やかになること】を差すんです。だから碓氷さんの周りにはたくさんの人が集まって、その人達の感情が風や波のように荒ぶっても、貴女の存在が穏やかにさせるんだなって」
「……………」
褒めたつもりはないのだが、その言葉を聞いた海凪はぐっと顔をしかめた。
「名前だけ聞いたら綺麗でしょうね。でもアタシはそんな奴じゃない。身勝手な理由でこの街を去り、仲間の信頼と約束を裏切ったのにも関わらず、もう一度この街に戻ってきてしまった。この名前も…アタシには相応しくないわ」
「……………」
「アンタも教えなさいよ」
「え?あ…僕は宮村心叶都です。多分、碓氷さんより年下だと思います」
「でしょうね。だってアタシ、本来なら高三だもの。まぁ、高校には行ってないんだけど」
「(マイキーくんやドラケンくんと同い年…)」
15歳にしては凄く大人びている。クールで近づき難いイメージがあり、顔にあまり感情が出なく、言葉も辛辣。
「(それでも…)」
彼女は少しあの人に似てると思った
「どうして…この街から去ったんですか?」
「何でアンタなんかに教えなくちゃいけないの」
「あ…そうですよね。立ち入ったことを聞いてすみません…」
機嫌を損ねたと思い、慌てて謝る。
「そのネックレス…珍しい形してるのね」
「はい。とても大切な人からの贈り物なんです。パズル型でペアになってるんですよ」
「……ピンクゴールド」
「え?」
「何でもない。そのネックレスの色が少し知り合いに似てて思い出しただけ。深い意味はないから気にしないで」
「…碓氷さんのそのピアスも、綺麗な色ですね。僕の大切な人の色に良く似てます」
海凪の片耳には赤い色のピアスが付いていた。その色を見たカノトはマイキーのことを思い出す。
「そう…アタシも贈り物なの。もう随分昔に貰った物だけど。未だに外せないの。」
どこか寂しげにピアスに触れる。
「もう少しで着くわ」
「あ、はい!」
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