第32章 好きな人の初恋の人
「(本当にご迷惑をお掛けしてるよ!はぁ…仕方ない、結構遠回りになるけど別の道から神社を目指そう。)」
肩を落とし、その場からまた迂回して別の道から行くも…
「しまった…色んな道を通り過ぎて迷った」
結局、迷子になってしまった。
「(ああもう!!迂回したと思ったら道の真ん中で猫同士が物凄い剣幕で喧嘩してて怖かったから入り組んだ道に入って出てみたら迷子だよ!!)」
無理やり通ったら私が引っ掻かれそうだったんだもん!
「…何処だろうここ」
静かな場所に出てしまい、辺りを見回す。左右に住宅は建っているものの、全く身に覚えがない場所だった。
「26にもなって迷子とか…」
どうしよう…
マイキーくんに連絡してみるべき?
「道に迷ったの?」
「!」
オロオロと不安げな顔をしていると後ろから声を掛けられる。後ろを振り返ると身に覚えのある少女が立っていて、カノトは"あっ!"と驚きの声を上げた。
「?」
「貴女は…!」
「何処かで会った事ある?」
「(前に会ったけど忘れられてる!?)」
金のメッシュにピンク色のショートヘアをした無表情の少女は冷たい声で言う。
「まさか…ナンパとかじゃないわよね?」
「ち、違います!」
ギロッと睨まれ、慌てて否定する。
「前に一度だけ助けて頂いたことがあるんです。理不尽な理由で難癖を付けられて困っていたところに貴女が現れて…それで貴女の蹴りが男の顔面に直撃したんです」
「…一々覚えてない」
「そうですよね。でもあれで僕は助かりました。ずっとお礼を言いたかったんです。あの時助けてくれて本当にありがとうございました」
ニコリと笑ってお礼を言えば、少女は素っ気ない態度で"覚えてないんだからお礼を言われても困る"と突っぱね返した。
「で?アンタは何でこんな所にいるの?」
「あー…実は行く所があったんですけどいつもの道が工事中でして…それで遠回りをした挙句に入り組んだ道を入ったら見事に迷ってしまいまして…」
「………………」
「(う…呆れられた目で見られてる。)」
「はぁ…中学生にもなって迷子って。アンタ幼稚園児じゃないの?」
「(相変わらず辛辣…)」
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