第32章 好きな人の初恋の人
「(授業で使うノートと色付きのペンが半額セールで安く買えて良かった♪)」
本屋に寄った帰り道、お洒落な袋を提げながら家に向かって歩いていた。
♪♪~♪♪~
「!」
着信音が鳴り、横掛けのショルダーバッグから携帯を取り出すと、電話の相手はマイキーからだった。
「はい?」
《カノ、今何してんの?》
「用事が済んで帰ろうとしたところです」
《ならヒマだよな?》
「まぁ…ヒマと言えばヒマですけど…」
《武蔵野神社にいるんだけど今からオマエも来いよ!ケンチンも三ツ谷もいるからさ!》
「遊んでたんですか?」
《みんなで走りに行ってた!》
「そうなんですね。分かりました。今から向かいます」
《場所行ってくれれば迎えに行くよ?》
「いえ、もう割と近くですし、歩いて行けます。マイキーくんはみんなといてください」
《んー…わかった。じゃあ気をつけて来いよ?あ!何かあったらすぐオレに電話しろよ!バイク飛ばして行くから!》
「ふふ、はい。ではまた後で」
《ん!》
ピッと通話を切ってバッグにしまい、マイキー達が集まっているという武蔵野神社まで歩き始めた。
✤ ✤ ✤
「ええ!?工事中!?」
「申し訳ありません。こちらの道路、今水道工事を行っていまして。恐れ入りますが迂回をお願い致します」
"申し訳ございません"
ヘルメットを被った作業員がペコっと頭を下げる。いつも通る道を辿れば、その途中が水道工事を行っていて、通行止めになっていた。
「(仕方ない…遠回りだけど別の道から行くか。)」
そして引き返して別の道を使うことにした。
「(工事なんて早々被るもんでもないし。)」
そう思っていたのだが───……
「ここも工事中ですか!?」
「大変申し訳ございません。配電線工事につき只今こちらの道路はご利用頂けません。ご迷惑をおかけしております」
先程とは違う色のヘルメットを被った作業員がペコーっと頭を下げる。電柱を見上げると別の作業員達が空中に張った電線を弄り、何やら作業をしていた。
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