第32章 好きな人の初恋の人
「そんなにですか」
「いっつもケンチンがオレの髪と格闘してる」
「ドラケンくんに髪縛ってもらってるんですか?」
「うん。たまにエマもやってくれるよ。二人ともオレの髪に大苦戦してるんだ。下手すると梳かしてる最中で櫛が折れる」
「ええ!?」
「でも最終的にはちゃんと縛れてんの」
「マイキーくんは髪の量が多いんですね」
「もっと触っていーよ」
お言葉に甘えてもっと触ることにした。
「…マイキーくん」
「んー?」
「悠生くんのこと…」
「名前出すなっつったろ」
「…必要以上に近付かないし、二人きりにならないように注意します。もし…私がまた助けを求めたら、マイキーくん、助けに来てくれますか?」
「……………」
伏せていた顔を上げ、真剣な表情を見せたかと思えば、ふと微笑んで、手を握る。
「言っただろ。オマエが助けを求めれば、オレはどこにいたって、必ず駆け付けて、オマエを守ってやるって」
「そうでしたね…。あの雪の降る日でさえ、マイキーくんはどこにいるのかも分からない私を探し出してくれたんですもんね」
「不思議とオマエの声が聞こえたからな。その声を頼りに向かったら彼処にオマエがいたんだよ」
「心が通じあってるんでしょうか」
「愛の力♪」
るん♪と機嫌よく笑い、ぎゅ〜っとカノトを抱きしめた。
「(そうだ。チケット…)」
ポケットの中を漁り、委員長から貰った旅行券を出す。
「マイキーくん」
「今度はなぁに」
「いつかの休みの日、一緒に温泉に行きませんか?」
「温泉?」
「実は文化祭の告白大会で優勝したのはマイキーくんらしいんです。でも途中で帰っちゃったのでチケットの譲り手がいなくてクラスメイトに貰ったんです」
「告白大会…あーあれか。満点出したら優勝商品で旅行券が貰えるとか言ってたな。それにオレが優勝したの?」
「そうですよ。会場一致の満点です。マイキーくんの告白が一番素敵だったみたいですよ」
「ふーん。別に優勝狙うつもりで飛び入り参加した訳じゃないけど…。"あれ"は牽制のつもりでアイツの告白を邪魔しただけだし」
「牽制?」
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