第32章 好きな人の初恋の人
「本当だ。でっかい絆創膏貼ってある。そりゃこんなの貼ってたら怪しまれるだろうな」
「貼らなきゃ噛み跡を隠せないからです。おかげで誤魔化すの必死だったんですよ」
「なんて誤魔化したの?」
「猫に引っ掻かれたって言いました。そしたらどんだけ凶暴な猫なんだよって呆れられました」
「オマエを襲ったのは凶暴な猫じゃなくて、可愛すぎて思わずうなじを噛んじゃう手癖の悪い狼なんだけどな?」
「手癖悪過ぎです」
はぁ…っと呆れて溜め息が出た。
「でも悠生くんに『首に絆創膏を貼るのって"簡単には消えない跡を隠す為のカモフラージュでもある』って言われた時は流石にヒヤッとしましたけど」
悠生の名前を出した瞬間、マイキーの片眉がピクっと跳ねた。そして不機嫌そうに顔をしかめる。
「カノがアイツの名前出すの嫌い」
「!」
「思い出すだけでムカつく。"悠生くん"とか呼んでんじゃねーよ…バカ」
「(これは…ヤキモチ?)」
「つーか触らせてねぇよな?うなじンとこ。オマエに触れていいのはオレだけだろ?」
「触られてないですよ。私に触れていいのはマイキーくんだけです。こうして抱きしめてキスしてほしいって思うのもマイキーくんだけ」
「そんなの当たり前だ。オマエを他の奴に触れさせるとかマジで無理。アイツがオマエに触れただけでキレるかも」
「(マイキーくんの前で悠生くんの話は避けた方がいいな…)」
「だから必要以上に近づくの禁止。本当はカノの視界に入れたくねーし、声も掛けて欲しくねーけど、学校にいる間は流石に無理だって分かってるから諦めるけど…アイツがオマエに何かしたらって思っただけでゾッとする」
「マイキーくん…」
不安げに顔を伏せるマイキーの頭を優しく手で撫でる。
「それ…気持ちいい」
「頭撫でられるの好きですか?」
「別に好きって訳じゃないけど…カノに頭撫でられんのは好き」
「綺麗な髪色ですよね」
「そう?」
「(ふわふわ…)」
「カノの髪色の方が綺麗だと思うけど。オレ、朝起きると寝癖が凄いんだ。櫛で梳かしても髪が引っかかって上手く縛れねーの」
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