第32章 好きな人の初恋の人
「なんて言う花なんだろう?」
見惚れていると廊下から足音が聞こえた。
「(帰って来た!?)」
ハッと我に返り、慌てて押し花を箱に戻す。
ガチャッ
「っ!?……ん?カノ?」
「お、お邪魔してます…」
箱を棚に戻したと同時にドアが開けられた。ドアを開けた瞬間、部屋の中にいた不審な人物に気付いたマイキーは驚いて警戒するが、その相手がカノトだと知り、警戒心を解き、気の抜けた声を出した。
「マジでビビった。泥棒かと思ったじゃん。心臓に悪ぃ…」
「すみません…マイキーくんが不在だったので帰ろうと思ったんですけどエマちゃんに引き留められてしまって…」
「帰られたらすげーショックだったよ。オレに会わずに帰るなんて寂しいじゃん」
むす〜っとマイキーは顔をしかめる。
「熱はもう平気?風邪治った?」
「お陰様で」
「やっぱオレの看病が利いたんだな♪」
学ランを脱ぐとマイキーはカノトに歩み寄り、両手を広げる。
「おかえりのぎゅーして」
甘えたになったマイキーが可愛くて、迷わずその胸に飛び込んだ。ぎゅっと抱き締められ、マイキーの体温を感じる。
「はぁぁ〜やっと抱きしめられた。看病してる時は風邪移るからダメだって言われたし…抱き心地最高。相変わらずあったけぇし」
「おかえりなさい、マイキーくん」
「ただいま、カノ」
ぎゅっと抱きしめる腕に力が込められる。
「なんか今のやり取りってさ」
「はい?」
「新婚ぽくねぇ?可愛い奥さんが玄関で旦那のこと出迎えてくれて、おかえりのぎゅーとちゅーで癒してくれんの」
「…ちゅーします?」
「する!」
待ってましたと言わんばかりのテンションで、ちゅぅっと唇を重ねられる。
「はっ……んむ……んんぅ……」
久しぶりのキスに早くも蕩けてしまい、体の力が抜けそうになる。
「やっとマスク越しじゃなくて直接口にキスできた。…はは、もう目がとろんってしてる。久しぶりのキス気持ちいい?」
「ぅ、ん……」
「オレもすげぇ気持ちいい。おいで…ソファーに座ってもっとちゅーしよ」
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