第32章 好きな人の初恋の人
マイキーに会いたくなり佐野家に行けば、まだ帰宅していないとエマを言われ、諦めて帰ろうとする。
「何で帰っちゃうの!?せっかく会いに来たのにマイキーに会わずに帰るなんて!」
「僕が勝手に来ただけだから」
「部屋で待ってれば帰って来るって!」
「本人がいないのに部屋に入るのも…」
「もうカノトは遠慮し過ぎ!別に恋人同士なんだから本人がいなくても部屋に上がっていいの!ウチが許可する!」
「わっ!急に引っ張らないでよエマちゃん…!」
「帰ってきた時に部屋にカノトがいたら絶対マイキー喜ぶから!」
強引に手を引くエマに慌てて靴を脱ぎ、マイキーの部屋に案内される。"じゃあウチ、ヒナと遊んで来るね〜!"と笑顔で手を振り、エマはカノトをマイキーの部屋に一人残し、去って行った。
「(マイキーくんに旅行券のこと言わないと。)」
ソファーに座り、一息つく。
「(改めて見るとマイキーくんの部屋って大人っぽいよね。まぁ…ベッド以外は真一郎さんのモノって言ってたっけ…)」
ぐるりと部屋を見回す。
「(床にバイクのタイヤの跡…。あ、棚の上にお菓子類。どら焼きがある。)」
本当に好きだなぁ、どら焼き
「(たい焼きもだけど。)」
クスッと笑ってソファーから立ち上がり、棚に近付くと、甘味類が入った箱や真一郎が置いていった漫画やCDがある。
「この漫画知らない。人気なのかな?あ、このCD…兄さんも持ってるやつだ」
他のCDも見たいと思って棚から引き抜こうとすれば、横に置いてあった箱に手がぶつかり、ひっくり返してしまった。
「わっ!?やっちゃった!!」
床に散乱したCDを元に戻そうとしゃがみ、慌てて拾い集める。
「傷とか付いてないよね…」
ケースを確認するが無事だった。ホッと安堵の表情を浮かべ、慎重に箱の中にしまう。
「ん…?何だろうこれ…?」
押し花…?
その花を見た瞬間、誰かを思わせる色をしていた。
「綺麗な赤…マイキーくんの色みたい」
栞自体は少し色褪せてはいるが、乾燥させた赤い色の花だけはまるで最近まで咲いていたかのような新鮮さを保っていた。
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