第31章 思い出は黒く塗り潰される
「オレ、オマエに溺れ過ぎておかしくなってんだ。…アイツの言う通り、オレがオマエに向ける愛はやっぱり歪んでる。だから…オレの愛でオマエを傷付けたらごめんな。でも…その愛は拒絶しないでくれ」
眉を下げ、どこか悲しい顔で笑う。
「……………」
『ごめんね、万次郎…』
「っ…………?」
突然、脳裏を過ぎった過去の記憶。一人の少女が申し訳なさそうな顔で謝っている。そして記憶の中の自分は傷付いた顔をしていた。
マイキーはふと思い出した記憶に目を見開き、驚いた顔を浮かべる。数秒の沈黙の後、眉を顰め、苦しそうな顔を浮かべた。
「むにゃ…」
「!」
「まいきー…くん」
「オレの夢でも見てんの…?」
「ふふ……」
「どんな夢見てんだろ…オレ達が幸せな夢だといいな。二人一緒に幸せになる夢…。夢の中でもオレの幸せを願ってくれてる?」
「まん…じろーくん」
「!」
「好き」
「っ…………」
へにゃっと笑いながら寝言を繰り返すカノトにマイキーは口許を手で覆い、頬を微かに紅く染めた。
「あーほんと可愛すぎ。寝言でオレの名前呼ぶとか反則だろ。いつもは恥ずかしがって呼んでくんねーのに…」
「スゥー…スゥー…」
「……………」
マイキーは片腕をベッドに乗せたままカノトの耳元に唇を寄せる。
「───オレも…好きだよ、カノ。」
口の端に手を当て、コソッと小さく呟いた。その声はとても嬉しそうで、カノトからの思わぬ不意打ちに笑みを浮かべる。
「!」
ふと本棚とゴミ箱の間に何かが落ちているのに気付いたマイキーはベッドから離れ、それを拾い上げた。
「封筒?何でこんなところに…」
すると鋏か何かで封が切られていたのか、逆さまの状態で持っていた為、封筒から一枚の写真がパラッと床に落ちた。
「やべっ……」
慌てて拾うと裏面の右下の隅に【家族写真】と印字された文字が記されている。
「家族写真…?」
ぺらっと写真を裏返す。
「っ…………!?」
その瞬間、マイキーは大きく目を見開き、驚きで一瞬、息を呑んだ。そこに写っていたのはある家族の集合写真だった。
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