第31章 思い出は黒く塗り潰される
「いーよ、寝な。オマエが眠るまで傍にいてやる。そうすれば起きてる間は寂しくねぇだろ?」
ウトウトし始めるカノトの頭を撫で、マイキーは優しい声で言う。その行為に甘える事にしたカノトはベッドに横になる。
「すっかり伝え忘れたけど、ケンチンがお大事にって」
「ドラケンくんにまで気を遣わせてしまいましたか…これ以上心配させないように早く治さないといけまけんね」
「ケンチン以上に心配したのオレなんだけど。オマエが熱出したって知ってすげー焦ったんだぞ」
「私もマイキーくんがお見舞いに来るって知って凄く焦りました」
「心配でいても立ってもいられなかったんだ。大事な彼女が熱で苦しんでたらそれを介抱すんのが彼氏の役目だろ?」
「看病してくれてありがとうございます、マイキーくん」
「でもただの風邪で良かった。早く治して元気な姿オレに見せてよ。カノを抱きしめてキスしたくて仕方ねーんだからさ」
「…善処します」
「あー照れてる〜♥」
ベッドの側に寄り添い、胡座を掻いて座るマイキーは相変わらず照れ屋な恋人の初々しい反応にニマニマと笑い、頬を指先で軽くつつく。
その数分後、カノトから規則正しい寝息が聞こえ始め、マイキーはじっとその寝顔を嬉しそうに見つめる。
「…いくらオレが傍にいるからって無防備に寝すぎじゃねー?熱なんか出てなきゃ問答無用でベッドに押し倒してエロいことしてたっつーの」
むぅっと頬を膨らませ、"分かってんのか"と頬をつつけば、"んん…っ"とカノトの顔がしかめられる。
「ふはっ、変な顔。寝てる隙に悪戯されても知んねぇからなー。まぁ…しねぇけど。」
ベッドに片腕を乗せ、もう片方の手でカノトの前髪をそっと手で払う。
「(…うなじ噛んだ時、痛がって泣くコイツの反応見て、正直すげー興奮した。ダメだって分かってても…本能に抗えなかった。)」
"好きな女だから噛みたいと思った"
「はは…やべぇなオレ。マジで変態かよ。そういう趣味はねぇはずなんだけどなぁ…」
自分で自分の行いを嘲笑った。
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