第31章 思い出は黒く塗り潰される
「今日は我慢してくださ…」
言い終わる前に、ちゅっとマスクの上から唇を押し付けられる。目を閉じてキスをするマイキーに驚いて目を見張った。
「………、ダメって言ったのに。」
「コレ邪魔。ちゃんと口と口でちゅーしたい。だから早く治してたくさんちゅーしよ」
「そうですね。私もマイキーくんとキスしたいです。だから…早く治しますね」
「外してちゅーする?」
マスクのゴムに人差し指を引っ掛けて、耳から外そうとするマイキーにカノトはダメだと云うように手を胸の前に出して遠慮した。
「くしゅ!」
「ごめん、寒いよな。今度こそ本当に着替えてゆっくり休もう」
その後、うなじを噛んで泣かせた事への罪悪感からか、マイキーは悪戯することなく、替えのパジャマをカノトに着せた。
「そのパジャマ可愛い。さっきのやつも可愛かったけどクリーム色で胸ポケットに三日月のワッペンが付いてるところが可愛い」
「ありがとうございます」
裏生地がモコモコしてて眠る時、ぐっすり眠れる。ずっと前にマドカと一緒にショッピングモールに行った時に買ったものだ。
「なぁ今度お泊まりデートしよ」
「お泊まりデート?」
「朝から出掛けて、そのままオレんちに泊まんの。あ、パジャマはオレの着て欲しいから用意しなくていいよ。そんで、ずっと部屋でイチャイチャして、寝る時はぎゅって抱きしめ合いながら寝たい」
「それ…凄く楽しそうですね。朝からマイキーくんに会えるのもそうですけど、一日中一緒にいられるのは嬉しいです」
「だろ?目が覚めて隣にオマエがいたらすげー最高じゃん。いつもは寝起き悪ぃんだけど、カノからのおはようのキスがあれば一発で目覚めるし」
「本当に一発で起きます…?」
「もっとしてほしいから狸寝入りするかも」
「それじゃあキスする意味ないじゃないですか」
「あーすげぇ楽しみ。お泊まりデート♪」
るん♪と一人でご機嫌になるマイキーは楽しそうに声を弾ませて笑う。その顔にふと笑みを浮かべて、カノトも笑い返した。
「…マイキーくん。少し横になってもいいですか?」
「眠たくなってきた?」
「…はい」
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