第31章 思い出は黒く塗り潰される
「綺麗なうなじだなって見つめてたら、髪が肌に張り付いててエロいと思って…そしたら噛み付きたくなった」
「…痛い」
「うん、痛いだろうなって思った」
「なら噛まないでくださいよ…」
噛んだ箇所にはマイキーの歯型がくっきり残っており、そこからは血も少し出ている。
「……………」
痛がるカノトのうなじに唇を寄せ、噛んだ場所に軽く吸い付く。
「んっ」
ぴくんっと体が小さく跳ねる。
「マイキーくん、何して…」
ちゅっ
「んぁっ」
ちゅっ
「ね、ねぇ…マイキーくん!」
ちゅっ
「んんっ」
うなじや肩に触れるだけのキスを落とす。軽いリップ音が聞こえ、その音にさえも僅かに反応してしまう。
「え、えっちなことはしないって言ったのに…!病人相手に手出してるじゃないですか!信用はどこにいきましたか…!」
「はぁ…カノ…」
「んっ…あ…」
「すげー興奮してる。どうしたんだろオレ…熱出したオマエがいつも以上に色っぽくて、それで抑えが利かねーのかも…」
「やっ!か、噛まないで…!」
「もう噛まないよ」
うなじに唇を押し当てたマイキーにまた噛まれると思い、涙を浮かべて怖がるカノトを安心させるように耳の後ろにちゅっとキスをする。
「こんなとこ…隠しようがない…」
「隠さなくてもいいじゃん。オレのモノっていう新しいシルシだよ。歯型も残ってるし、キスマより簡単に消えなさそうだな」
「んっ…まだ痛いから触らないでください」
歯型の上から指先をなぞられ、ピリッとした弱い痛みが走り、微かに顔を歪める。
「嫌いになった…?」
「なりませんよ」
「痛い思いしたのに?」
「本当に痛くて声が出ませんでしたよ。でも噛んだからと言ってマイキーくんのことを嫌いにはならないです」
「こんなオレでもまだ好き?」
「どんなマイキーくんでも嫌いにならないって言ったじゃないですか」
まだ痛むうなじに手を遣り、優しく擦る。
「カノ、顔、こっち向けて」
「え?」
「ちゅーしたい」
「風邪移すといけないのでダメです」
「移ってもいいからちゅーしよう」
.