第31章 思い出は黒く塗り潰される
「エマなんか夏になると日焼け止めクリームめっちゃ塗ってるぞ。海で焼けたくねぇからって」
「そういう女の子多いですよね。でもエマちゃんも白い方だと思うんですけど…」
「オレの方がエマより白いからすげー文句言ってくる。"日焼け止め塗ってないマイキーの方がウチより白いのおかしいー!"って」
その時のエマの様子を想像してしまい、思わずクスッと笑ってしまう。
「でもカノは肌白い方がいいな」
「そうですか?」
「うん、オレが付けたキスマークの場所がハッキリ分かるし、照れたり恥ずかしがったりすると顔とか首が赤くなるから反応が分かりやすい」
「……………っ」
「(それに…綺麗なうなじしてんだよな。汗で首に髪が張り付いて…すげーエロい。)」
じっとうなじを見つめていると、突然噛みつきたい衝動に駆られる。
「(噛んだら痛いよな?絶対怒るだろうし。めちゃくちゃ痛くて泣くだろうな…)」
痛い思いをすると知っていても、噛む衝動が抑えられず、マイキーはゆっくりと口を開け、カノトの白いうなじに顔を寄せると、手加減なしに噛み付いた。
がぶっ!
「い"っ……!!?」
背中を拭くタオルの温かさに浸っていると、突然うなじに強烈な痛みが襲いかかった。
「な、何!?」
心臓がバクバクと大きく脈打ち、ズキズキと激痛が走るうなじを手で押さえる。驚いたカノトは涙目になり、後ろを振り返った。
「ごめん。噛んじゃった。」
「っ〜〜!!ごめんじゃない!!」
これには流石のカノトも怒る。
「いきなり何すんですか!!めちゃくちゃビックリしたし、めちゃくちゃ痛いんですけど!?」
何だその軽い謝罪は!?と怒りが込み上げ、キッと涙目で睨むとマイキーは平然としている。
「というか本気で噛みましたね!?皮膚が食いちぎられるかと思いましたよ…!!」
「痛かった?」
「逆に何で噛み付かれて痛くないと思ったんですか!?」
「見せて」
「……………」
前を向き、うなじを覆っていた手を退かす。
「ほんとだ…思いっきり歯型ついてる」
「冷静に言わないでくれます!?」
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