第31章 思い出は黒く塗り潰される
「はい。マイキーくんから貰った物は大事にしてるんですよ。部屋だって兄さん以外の男の人を入れたのはマイキーくんが初めてです」
「オレが初めて?」
「そうですよ」
「…そっか。オレが初めてかぁ。なんかいいな…こういうの、特別ってカンジがして」
嬉しそうに微笑んだマイキーを見て、カノトも嬉しそうに笑う。
「あの…マイキーくん。体がベタついて気持ち悪いので着替えたいんですけど…」
「ん?着替えていーよ?」
「い、いやいや!着替えてるところ見られるの恥ずかしいんですよ…!」
「全部見てんのに?」
「当たり前じゃないですか…!」
「なら早く慣れるようにオレも着替えるの手伝ってあげる♪」
「激しく遠慮したいんですが…。一人でも着替えられるので少しの間、部屋の外で待っててください」
「えー寒そうだからやだ。それに一人で着替えんのも大変だろ?だからオレが着替えさせてやるよ」
「別に大変じゃないです…」
「もしかして着替えてる最中、オレにえっちなことされると思ってるから警戒してんの?」
「!」
「うわ、図星だ。…はぁー信用ねぇな〜。確かにカノにえっちなことすんの好きだけど、流石のオレも病人相手に襲わねぇって」
「さっき襲いかけたの誰ですか」
「襲ってねーし。匂い嗅いだだけだもん。首にちゅーしたのだって決して下心があった訳じゃないし」
「(絶対に嘘。)」
「とにかく!オレはそこまで我慢のできないケダモノじゃねーの!」
「本当に何もしないですか?」
「…………、しない。」
「今の間が怪しいんですが」
自信なさげに言ったマイキーを訝しげに見る。
「じゃあ…洗面所に行ってタオルを濡らしてきてくれますか?場所は部屋を出てすぐの右側のドアです」
「タオル濡らしてくればいいんだな」
「(私はクローゼットから替えのパジャマを出しておこう。)」
着替えを手伝える事が嬉しいのか、マイキーは上機嫌で部屋を出て行った。その間にベッドから下りてクローゼットから替えのパジャマをハンガーから外し、温くなった冷えピタを剥がして丸めてゴミ箱に捨てた。
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