第31章 思い出は黒く塗り潰される
「まさか…マイキーくん?」
念の為、マスクをして、覚束無い足取りで玄関に向かい、覗き穴から外を確認すると、両手いっぱいに袋を提げたマイキーが立っていた。
ガチャッ
「カノ!熱平気か?」
「…学校はどうしたんです」
「サボった」
「今すぐ戻ってください…」
「そんなしんどそうな顔したオマエを残して戻れるはずねぇだろ。明らかに絶不調じゃん。マドカさん、大学行ってんだろ?」
「……はい」
マイキーくん…汗掻いてる?
もしかして心配で
走って来てくれた…?
平然を装っているがマイキーの首から汗が流れている。きっと急いで走ってきてくれたのだろう。
「とりあえずこれ、買ってきた。ポカリとかお茶とかゼリーとか色々」
「…わざわざありがとうございます」
「上がっていい?」
「…うーん」
「看病させて」
「でも風邪移すと大変ですし…」
「オマエから貰う風邪なら嬉しいよ。それにオレが風邪引いたらカノが看病してくれる約束だろ?だから熱で寝込んでも平気」
「…約束はしましたけど」
「オレがいると休めない?」
「…そんなことはありません」
「オレがカノの看病してもいい?」
「ダメって言ってもする気でしょう」
「分かってんじゃん」
「じゃあ…看病してください」
「やった!任せろ!」
マイキーは嬉しそうに笑う。
「(口では拒絶したけど…本当はマイキーくんが来てくれて嬉しかったりする。)」
「抱き運ぶからコレ持ってろ」
「へ?」
「よっと…!」
「ひゃあ!?」
コンビニの袋を持たせられるとマイキーがカノトを横抱きにして抱え上げた。
「な…ななな…!」
突然の行動に驚いたカノトは熱の熱さとは別に恥ずかしさで顔を更に真っ赤にした。
「部屋どこ?」
「お、降ろして!降ろしてください…っ!」
「そんなに暴れたら落ちるって。別にお姫様抱っこくらいで恥ずかしがんなよ。これよりもっと恥ずかしいことたくさんしてるだろ」
「っ………!」
「それに比べたら平気じゃん」
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