第31章 思い出は黒く塗り潰される
「俺もお前らが簡単に離れるとも思ってねぇしな。そこは心配してねえ。一応な」
「一応かよ」
「ただ…未来は誰にも分からねぇだろ」
「未来…?」
「"俺達の前から黙っていなくなったりしない"…そう約束した『あいつ』でさえ、俺達の前から黙っていなくなった」
「それは……」
「約束は守る為にある。けど、その約束が未来まで守られる保証はどこにもねえ」
「……………」
「だからお前らが証明してくれ。"お互いに離れない"っつー約束を、未来まで守ってくれ」
「未来までって…"どの先の未来まで"?」
「あーそうだな…。お前らが結婚して、ガキ産んで、年老いたじじばばになって、死ぬまで一緒にいる、"先の未来まで"だ」
その未来の話にマイキーは一瞬驚いた顔をした後、嬉しそうにはにかんで笑った。
「ぜってー約束する。てかもうカノの左手の薬指、予約済みだし。オレもカノもケンチンが望む未来の先まで、ずっと一緒にいるよ」
「予約までしてんのかよ。行動が早ぇな。」
それにドラケンも笑う。
ピロン♪
「!」
その時、マイキーの携帯が鳴った。
「メール?」
"おはようございます、マイキーくん"
「カノだ!ケンチン!カノから返信きた!」
「おー良かったじゃん」
"ほら!"と言って嬉しそうに携帯の画面をドラケンに見せる。
「(この締まりのないニヤケよう…。相当カノに堕ちてンな。)」
マイキーはメールの続きを読む。
"今朝は返信遅くなってごめんなさい。実は熱が出てしまって学校をお休みしてます。残念ですけど今夜の電話は出来そうにないです"
「熱!?」
「どうした?」
「カノが熱出て学校休んでるって…」
「アイツが熱なんて珍しいな。今日の返信が遅かったのもそのせいか」
「ケンチン!熱出た時って何が必要!?」
「それ聞いてどうすんだよ?」
「決まってるだろ!今からカノの見舞いに行くんだよ!」
「あ?今から?」
マイキーは慌てて返信を返し、残りのたい焼きを強引に口に押し込め、ごくんっと飲み込んだ。
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