第31章 思い出は黒く塗り潰される
「もしカノがオレと同じ三年でクラスも一緒で席だって隣同士だったら、ぜってぇ楽しいだろ?」
「お前いつも寝てんじゃねーか」
「カノが隣の席なら寝ないし!むしろ寝てる時間が勿体なくてずっと起きてるし!」
「そんで授業中にも関わらず、アイツにちょっかい掛けて遊ぶってか?」
「怒りそうだよな〜」
それを想像してマイキーは笑う。
「真面目だからなアイツは。本当…俺らの世界とは無縁の世界で生きてた奴だよ。けどさ、それでもアイツは俺らの世界に飛び込んできたんだよな」
「オレが止めても聞かねーんだ。きっとアイツにも守りたいものがあるんだろうな。だからいつも必死に戦ってんのかも」
「必死に戦う、か…。まるで…"あいつ"みたいだな。どんな戦場でも臆せず戦う。どんな敵が相手だろうと全力を尽くして、何かを必死に守ろうとする」
「……………」
マイキーの表情が曇る。
「強いな、お前のヨメは。俺らに比べて心が強ぇ。お前がベタ惚れすんのも分かるわ」
「だろ?強くてかっけぇんだ、カノは。オレには無ぇもんをアイツは持ってる。どんな状況でも簡単には折れねぇ強い心がある」
羨望の眼差しを向け、笑う。
「だから…オレの傍にいてほしいんだ。アイツの存在がオレを正しい道へと歩ませてくれる。カノが傍にいてくれるから…オレは自分を見失わずにいられるんだ」
柔らかな風が吹き、マイキーの髪が靡く。
「マイキー」
「ん?」
「死んでもアイツの手を放すなよ」
「!」
「その繋がりが途絶えたら、今みたいな関係に戻るのは容易じゃねぇぞ。アイツは優しい奴だからお前を嫌いにはなれねぇ。けど…お前からアイツを拒絶しちまったら、それこそ本当に終わりだ」
真剣な表情で二人の関係を心配するドラケンにマイキーは笑みを崩してふと笑う。
「オレがアイツの手を放すわけねーじゃん。アイツもオレもお互いの傍にいることを選んだ。"約束"もした。もしオレがアイツを拒絶すんなら…アイツの存在をオレが必要としなくなった時だ」
「……………」
「まぁそれは絶対にありえないけどな。それにオレらは愛し合ってんの。そう簡単にこの繋がりが失くなることはねぇよ」
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