第31章 思い出は黒く塗り潰される
「はぁ…今日は大人しく寝てた方が良さそう。これ以上熱が上がったら本当にやばい…」
ベッドに入り、横向きになって、携帯を開く。すると毎朝マイキーから届く"おはようメール"がきていた。
"カノ!おはよ!"
「(これを見る度に一日頑張ろうって思うけど…今日ばかりは頑張れそうにない。)」
ごめんね…マイキーくん
とりあえず返信だけを返して携帯を閉じる。目を瞑れば、窓から射し込む日差しの暖かさですぐに睡魔が襲い始めた。
✤ ✤ ✤
カノトが夢の中に落ちた頃、屋上でドラケンと一緒に退屈な授業をサボっていたマイキーは登校前に寄ったコンビニで買ったたい焼きを口に咥えたまま、物思いに耽っていた。
「……………」
無言でもぐもぐとたい焼きを頬張るマイキーのいつもと違う様子に気付いたドラケンは声を掛ける。
「どうしたマイキー」
「ん?」
「今日は随分と元気ねぇな」
「…どうしようケンチン」
「?」
「カノからおはようの返事が来ねぇ」
「は?」
落ち込んでいる様子からして、てっきり大事な事で悩んでいるかと思えば、マイキーの口から出た言葉にドラケンは呆気に取られる。
「…何事かと思えば。カノから返信返って来ないだけで落ち込んでたのかよ」
「オレにとっては落ち込むレベルなんだよ!いつもならオレがおはようって送るとすぐに返信してくれんのに今日はまだ来てねぇの!」
「(コイツ…マジでカノの事ばっかだな。こないだも惚気られたし…どんだけアイツのこと大好きなんだよ。)」
たい焼きを咥えたまま、むぅっと顔をしかめるマイキーに"心配して損した"と呆れ交じりに溜息を零した。
「そんなに気になるなら電話してみりゃいいだろうが。そうすればお前の悩みも消えんだろ」
「学校がある日は終わるまで電話はダメって言われてんだよ。それ破ってアイツに嫌われたくねーし…」
マイキーは不貞腐れたように頬を膨らませる。
「なぁケンチン…何でアイツ、オレとおんなじ三年じゃねーのかな」
「どういう意味だ?」
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