第28章 薬指に永遠の口付けを
《さすが三ツ谷♪じゃあオレ、カノ迎えに行って来る!たい焼きは任せた!》
「(三ツ谷くんがいてくれて良かった。二人の言い合いを止められるのはそこにいる三ツ谷くんだけだもんね。)」
《カノ!迎えに行くから待ってろよ!》
「はい」
《会ったらソッコーぎゅってさせて!》
「え、いや…みんなが見て…」
《それじゃあ、また後でな!》
「ちょ!?マイキーくん!?場所がまだ…!」
早く会いたくて気が急いたのか、一方的にプツッと通話を切ったマイキーに唖然とする。
「(場所を伝える前に切られた…。マイキーくん、きっと困るよね?こっちから迎えに行った方がいいかも。)」
携帯をしまい、後ろを振り向く。
「ごめん悠生くん。これから人と会う約束があるからもう行くね。悠生くんもそろそろ休憩でしょ?文化祭、楽しんで。」
カチューシャだけ外し、メイド服のまま、教室を出て行った。
「………。楽しめるわけないだろ…アンタが一緒じゃなきゃ、他の女と回ったって意味がない」
苛立ちと悔しさが交ざった表情を浮かべ、悠生はカノトが出て行ったドアを見つめた。
✤ ✤ ✤
「(一応途中で眼鏡掛けて髪も耳の下でシュシュで結んで変装したけど…どうかカノトだってバレませんように!)」
道行く人達がメイド服を着たカノトを見ている。元より美人顔だからか、注目を集めやすいようだ。
「(うぅ!でもやっぱり恥ずかしい!そんなにジロジロ見ないで〜!)」
そこから早く立ち去りたかった。
「(マイキーくん…どこにいるんだろ?)」
勘で、マイキーが来るであろうルートを通って行く。
「あ!いた!」
ちょうど階段の下でマイキーを見つけた。どうやら彼はカノトのいる場所が分からず、立ち止まっているようだ。
「マイキーくん!!」
こちらに気付いたマイキーがカノトを見る。
「っ!?」
その瞬間、マイキーは驚きの余り、目を見開いたまま固まった。
「良かった!入れ違いにならなくて!」
階段を駆け下りてきたカノトがホッと安堵の表情を浮かべる。
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