第28章 薬指に永遠の口付けを
「(心臓すげードキドキいってる。やばい…男のクセにあんな可愛く笑うのかよ。)」
「あ、見て。外も凄い賑わってるよ。他校の生徒とか一般のお客さんで今年も盛り上がりそうだね」
悠生はドクンドクンと逸る心臓を落ち着かせ、まだうっすらと紅潮している頬を残しながら、カノトを見た。
「カノト」
「なに?」
「やっぱり俺、お前を諦めるとか無理。」
「無理って言われても僕には恋人が…」
「だからさ…その恋人から本気で奪いたくなった」
「は…?」
「前にお前と彼女を別れさせてやろうとか思ってないって言ったけど、前言撤回。カノトのことが欲しいから全力で落としにかかることにした」
どこか清々しい顔でそう言ってのけた悠生にカノトは驚いた表情で目を見開いた。
「な…何言ってるんだよ!?僕は何度も君を好きになれないって断ってるだろ!?それに大事な恋人もいる!!悠生くんの入る隙なんてない…!!」
「俺にもチャンスちょうだい」
「チャンス…?」
「絶対にお前を落とす自信がある。お前がその恋人のことを凄く大事にしてるのは分かるよ。けど…どうしてもカノトに俺を好きになってもらいたいんだ」
「!」
「だから、覚悟してて」
珍しく真剣な眼差しを向けられ、カノトはどうしていいのか分からず、困った顔を浮かべる。
Piii…
「!!」
その時、タイミング良くポケットにしまっていた携帯が鳴った。慌てて取り出し、相手を確認する前に発信ボタンを押す。
「もしもし!?」
《カノ!今オマエんとこの文化祭に来てんだけど、どこに行けばカノに会えんの?》
「(マイキーくん!)」
好きな人の声を聞いただけで、嬉しくなって、パッと顔が綻んだ。
「(またあの笑顔…。俺が欲しい笑顔…。なんだよ…さっきまで嬉しくてドキドキしてたのに…今はすげー苦しい。)」
悠生は顔をしかめて、嬉しそうに電話をしているカノトを見ている。
「文化祭、一人で来たんですか?」
《んーん。ホントは一人で来るつもりだったんだけど、ケンチンと三ツ谷も一緒!》
「ドラケンくんと三ツ谷くんも…?」
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