第27章 実らない初恋をいつまでも
「俺は別に困らないよ」
「僕が困るんだよ」
「俺みたいな彼氏、欲しいと思わない?」
「全然」
「今の彼女より優しくしてやれるよ?」
「余計なお世話だよ。それに僕の恋人は悠生くんよりもずっとずーっと優しいから。悠生くんがどんなに僕に優しくしてくれても、僕の恋人を超える優しさは無いと思うよ」
「…すげー厳しいコト言うね」
「本気で突き放さないと諦めないって言ったのは悠生くんじゃん。僕は君に諦めてもらう為に冷たく突き放してるんだよ」
「今のは少しショックだったよ。でもまだ全然足りない。この程度じゃまだ諦めないよ」
「悠生くんも案外しつこいね。実らない初恋をいつまでも引きずってても、逆に辛いだけじゃないの?」
「!」
そう言うと悠生の顔色が変わった。少し寂しそうな、それでいて、どこか切なげな笑みを浮かべる。
「(確かに…初恋は実らないって言うけど、でも、だからって、本気で好きになった相手を簡単には諦められないだろ。…悔しい。コイツの心が全く俺に向かない。100%、カノトの想いはその恋人に全部、向けられてるんだ。)」
悠生はグッと掌を握りしめる。
「ねぇ悠生くん。絶対に君に心が傾かないって分かってても、君は僕をずっと好きでい続けるの?」
「うん。本気で好きになった子だから、そう簡単には諦めたくないんだ」
「……………」
「だから俺を見てよ」
「ごめん。僕は恋人しか見えてないんだ。いくら悠生くんが僕を好きでも、その初恋を実らせることはできないと思う」
「(あー…ガード固いなぁ。こんだけ想いをストレートに伝えても、ちっとも響かねぇし、笑顔すら向けてくれない。)」
「というか、教室でこんな話はやめよう。誰かに聞かれると流石に困る」
小さく溜息を吐く。
「じゃ、別の話でもしようよ」
「別の話?」
悠生はニコリと笑う。
「文化祭、誰かと回る予定ある?」
「うん」
「彼女?」
「いや…違う人」
「あれ?来ないの?彼女。」
「まぁ…色々忙しいみたいだから」
「彼女来ないならさ、俺と回ろうよ」
「その人と回るから無理だよ」
「俺も混ざっていい?」
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