第27章 実らない初恋をいつまでも
「っ────!!」
ビクンッと身体が跳ね、目を醒ます。
「ハァ、ハァ…っ…夢…?」
震える声で呟く。どうやら夢から醒め、現実に戻ってきたらしい。荒い呼吸を繰り返しながら周囲を見渡すとそこは自分の部屋で、震える手で首に触れる。
「首輪…ない。鎖も繋がれてない。部屋も、ちゃんと私の部屋だ…」
ゆっくりと上体を起こすと、身体は汗でベトベトになっていた。手汗も掻き、目からは涙が流れている。
「はぁぁぁぁ〜〜〜」
酷い安心感だった。手で胸を押さえ、苦しかった呼吸に酸素を取り込み、ドクンドクンと脈打つ心臓を必死に落ち着かせる。
「…久々に会った…闇堕ちマイキーくん…」
時計を見ると起床時間の二時間前だった。当然、二度寝の気分にはなれず、そのまま起きてることにした。
「出逢ったことが間違いだったなんて…そんな、悲しいこと、言わないでよ…」
夢の中のマイキーに言われた言葉が目覚めた後も心に深く残り、悲しい顔を浮かべる。
「貴方と出逢わなきゃ…今まで見た世界の楽しさを知る事もなかったし、誰かを愛するっていう気持ちも抱くこともなかったんだよ…全部、マイキーくんが与えてくれたものなのに……っ」
夢の中の彼はその全部を否定した。自分と出逢わなければ良かったと。出逢ったのが自分じゃなければ良かったと。
「じゃあ…他の人なら良かったの?その人がマイキーくんと出逢って、私と行った場所に行って、マイキーくんに好きとか愛してるとか言われて…抱きしめたりキスも……っ……」
言っているうちに胸の奥から込み上げてくるものがあり、目頭が熱くなる。
「や、だ…そんなの…絶対にやだっ…!マイキーくんは、私のだもんっ、私が一番好きだもん…っ、他の人なんかに渡したくない…ッ」
ポロポロと涙が溢れ、ギュッと掌を握る。
「マイキーくんが好きなのは私だもん…!」
落ちた涙の雫が布団を濡らす。
「(貴方に拒絶されたら…私は悲しくなる。好きじゃないなんて言わないで。私との繋がりを切ろうとしないで。私は…マイキーくんに愛されていたいの。)」
上体を前に倒して布団に顔を埋め、声を押し殺して小さく泣いた。
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