第26章 我儘な彼氏は彼女の隠し事を暴きたい
「飲み物ココアでいい?」
「はい」
「持ってくるから適当に座ってて」
「ありがとうございます」
部屋に着くと、飲み物を取りに部屋を出て行ったマイキーを見送り、戻ってくるまでソファーに座って待つことにした。
「(抱きしめられた時、マイキーくんの体温が温かくて嬉しかった。ちゃんとここで生きてるんだ。それだけで凄く安心できる。)」
最後に触れた温もりは冷たかった。抱きしめた身体もキスした唇も…。だから余計に実感してしまう。
あの時、自分を残して死んでしまった最愛の人が、過去を遡って、ちゃんと自分の腕の中で生きているのだと。
「(というか…マイキーくんが私をオカズにそういうことシてるって知った時は驚いたけど…まぁ、お年頃だもんね。めちゃくちゃ恥ずかしいけど。)」
ピロン♪
「!」
恥ずかしさで頬を紅く染めていると、ポケットにしまっておいた携帯が鳴った。
「メールだ」
受信ボックスを開き、相手を確認する。
「げっ…悠生くん」
【やっほー!文化祭の準備お疲れ様!】
【この前のツーショット写真、送っておくね♪】
【カノトのメイド、楽しみにしてる♥】
「……………」
最後のハートに若干ウザさを覚えながら、本文と一緒に添付されていた写真を見る。
「(勝手に撮られた写メを送られても…)」
そこには執事服を着た悠生に抱き寄せられながら、無理やり撮られた自分が写っている。
「(あの日…悠生くんに告白されて以来、なんだか彼と話すのが気まずい。でも悠生くんの態度は変わらないし、むしろ告白されたのが嘘なんじゃないかってほど、普通に話しかけてくる。)」
深い溜息を洩らし、返信しないまま、携帯を閉じようとした。
「携帯と睨めっこして何してんの?」
「っ!?」
飲み物を取りに戻ってきたマイキーに驚いて、慌てて携帯を閉じる。
「は?何で慌てて閉じた?」
「と、閉じてないデス…」
「嘘つけ。声が裏返ってんぞ。何、オレに見られたら困ることでもあんの?」
「あるわけないじゃないですか。ただメールしてただけですよ。慌てて携帯を閉じたのは突然声を掛けられて驚いたからです」
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