第23章 変わらなかった世界
「あ、すみません。会ったばかりなのに馴れ馴れしかったですよね」
「…今度は助けないから」
「!」
興味を無くしたように素っ気なく言うと少女は無表情で立ち去って行った。
「…あまり感情が表に出ないのかな。」
初対面で会った時から別れるまでの間、少女はずっと無表情だった。そればかりか、冷たい目を宿し、素っ気ない声だった。ニコリともしなかったのだ。
「(名前、聞いておけば良かった…)」
既に立ち去った方向をじっと見つめるが、タケミチに呼び出されていた事を思い出し、慌てて約束の場所へと走った。
✤ ✤ ✤
「ごめんタケミチくん!お待たせ!」
「おーカノ」
「あれ?千冬くんもいたんだね?」
「さっきまでマイキー君家にいたんだよ。コイツと一緒に。」
「そうなの?」
「ドラケン君もな。マイキー君に単車(バイク)貰ったんだよなー?」
「マイキー君のバブと双子なんだぜ」
「双子?」
「昔、真一郎君がフィリピンで拾って来たんだって。オレが貰ったバブのエンジンとマイキー君のバブのエンジン」
「あぁ、だから"双子"なんだね」
「廃墟の中で悲しそうに転がってたって」
「へぇ……」
「それに真一郎君が部品集めて蘇らせたのがマイキー君のバブ」
「で、もう一個のエンジンがほっとかれれたからマイキー君とドラケン君でコツコツ部品集めて、やっと完成したのが!」
「タケミチくんがマイキーくんから貰ったバイクなんだね」
「あぁ!」
「私もそのバイク見てみたかったなー」
「コイツさ、バイクに乗り慣れてねーからマイキー君からレクチャー受けても全然覚えらんねーの!」
「うるせぇなぁ!仕方ねーだろ!?バイクなんて今まで乗ったことなかったんだから!」
「でも東卍の壱番隊隊長がバイク持ってないのはカッコつかないよね」
「それドラケン君も言ってた」
「大事にしなきゃね」
「うん」
ニコリと笑えば、タケミチも笑い返す。
「ところで二人で何の話してたの?」
そう言うとタケミチは笑みを消し、どこか言いづらそうな顔でカノトを見る。
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