第23章 変わらなかった世界
「…ハァ。これだから嫌なのよ、話の通じない無能な馬鹿は。脳ミソに何を詰めてんのかしら」
「(うわぁ…クール系の美人さんかと思えば、結構辛辣だなぁ。)」
「少し離れた場所から見えたけど、明らかにあんた達がそいつにわざとぶつかってたけど?」
「テメェ!いちゃもん付けんのかよ!」
「あたしは真実を言ったまで。それより…さっき殴り掛かろうとしてたわね?そっちの腕、ぶつかって痛いんじゃなかったの?」
「!」
「あぁ、嘘だったのね。まぁ最初から分かってたけど」
「おい女…途中で割り込んで来て何様だ?痛い目に遭いたくなきゃ、とっとと失せろ」
カノトから離れた男は少女の前に立ち、苛立ちを含んだ顔で見下ろす。だが少女は全く怯まず、冷たい目を男に向けた。
「その言葉、そのまま返すわ。痛い目に遭いたくなければ、とっとと消えなさい」
「上等だよクソアマ。先にテメェからぶっ殺してや──」
ガンッ!!
青筋を立てた男が少女に向かって手を伸ばした時、男の顔面目掛けて少女の強烈な足がめり込んだ。横に吹き飛んで壁に激突した男は白眼を向いたまま、気絶した。
「!?」
「なッ!?お、おい!!大丈夫か!?」
外見に反して、少女の強さにカノトは驚いて目を見張る。
「(今の蹴り、マイキーくんみたいに速くて全然見えなかった…。というより、彼女の蹴る姿、まるで…)」
「こ…このガキ!!」
「女性に手を出すのは見過ごせないな」
「!!」
「"天誅"」
少女の元へと駆け出そうとした男に声を掛け、驚いてこちらを振り向いた時に胸ぐらを引っ付かみ、体を反転させて反対側に勢い良く男を投げ飛ばした。
ドシンッ!!
「い"ッ……!?」
地面に背中から強く叩き付けられた男は痛そうな呻き声を上げ、先程の男と同じように白眼を向いて気絶した。
「助けてくれてありがとうございました」
「…別に。道を塞がれて邪魔だったから声を掛けただけ。あんたを助けた訳じゃない」
「それでも助けてくれた事に変わりはないです。女性なのに大の男を蹴り飛ばしちゃうなんて凄いですね。驚きました」
「……………」
褒めたつもりだが、少女は冷ややかな眼差しを向けている。
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