第23章 変わらなかった世界
「そんな自信なさげに言われても…」
「ちゅーだけじゃ生殺しじゃん…」
「約束は約束ですから守ってくだ…」
ジャリ…ッ
「!」
カノトがマイキーの肩越しに音がした方向を見る。
「どうした?」
「今、そこに誰かいませんでした…?」
「えー?気づかなかったけど。」
「(今の絶対に足音だった気がする…)」
不安そうな顔を浮かべるカノトを安心させるようにマイキーは頭にぽんっと手を置く。
「そんな心配しなくても大丈夫だって。カノの気のせいかもしんねーじゃん?」
「でも…地面を踏む音が…」
「……………」
カノトから離れたマイキーは音がした方へ行き、曲がり角からひょこっと顔を覗かせる。
「やっぱ誰もいねーじゃん」
「…いなかったですか?」
「カノが気にし過ぎてるんだって!」
「学校の中だからか余計に気にしてしまって…こんなところ誰かに見られたら…」
「見せつければいーじゃん。お前の恋人はオレなんだって。そしたら誰も手出し出来なくなるだろ?」
「もう…マイキーくんは他人事のように…」
「それより!たい焼き!食いに行こ!カノに会えて充電したからもう満足!」
「そうですね。行きましょうか。」
「たい焼きに『ずんだクリーム』が出たらしいんだよ!それがめちゃくちゃ美味そうで食ってみてぇの!」
「それは美味しそうですね!」
「いつも買うのはあんこなんだけどなー。でもやっぱどんな味か気になるし食ってみてぇじゃん?」
「確かに。新作は気になりますよね。美味しかったら追加で買って帰るのもいいですね」
「ケンチン達にも教えてやろ!」
「三ツ谷くんのところは妹さん達がいるのでオススメできますね」
「マドカさんにも買って帰れば?」
「そうですね。いくつか買って帰ります」
そんな会話をしながら二人は立ち去って行く。
「……………」
見つからないように隠れていた悠生は、どこか複雑そうな、切なそうな顔を浮かべていた…。
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