第22章 吾妻悠生
「ははッ、びっくりした?部屋にコレが置いてあってさ、ちょっと借りちゃった。でもカノがあそこまで驚いてくれるなんてオレ的に成功……って、カノ?」
座り込んだまま、顔を俯かせているカノトからの返事はない。
「おい、どうした?」
マイキーが片膝を付いてしゃがみ、じっと動かないカノトを心配そうに見る。すると地面に置かれた握り拳が小さく震えている事に気付き、マイキーはそこで初めて焦りの色を顔に浮かべる。
「なぁカノ、こっち向いて。オレの顔見て」
両頬を包み込み、顔を上げさせる。
「っ!?」
カノトの顔を見た途端、マイキーは驚いた顔で息を呑んだ。マイキーに驚かされたカノトは恐怖で顔が青ざめており、我慢していた涙が滝のようにボロボロと流れ、下唇をキュッと噛みながら、怒った顔でマイキーを睨んでいる。
「ごめん…!!そんなに怖かったなんて思わなくて…!!ほんの悪戯心だったんだよ。カノの驚いた顔が見たかっただけで…ホントごめんな…」
ぎゅうっと安心させるようにカノトの体を抱きしめる。
「もう…マイキーくんとは…一緒に…お化け屋敷には…入りません…」
「!」
「心臓が、止まるかと思った…」
「…一緒に入りたくないとか言うなよ。今のはオレが悪かった。許してくれるまで何度だって謝るから…オレを嫌いになんないで」
そんなマイキーの声もどこか泣きそうだ。
「悪戯にも限度というものがあります…。絶対に手は離さないって言うからお化け屋敷に入ったのに…離れたら入った意味ないじゃないですか。本当にマイキーくんがいなくなったのかと思ったんですよ…」
「約束破ってごめんな。手も離してごめん。心配かけさせて、泣かせて怖がらせて、ごめん。もうしないから…仲直りしてくれる?」
体を離したマイキーがおでこをこつんと合わせ、寂しそうな目で聞いてきた。
「…観覧車」
「え?」
「観覧車、一緒に乗ってくれたら…許してあげます」
「乗る!!二回でも三回でも一緒に乗る!!」
「いえ、一回で…」
「ありがとカノ!」
マイキーは嬉しそうにもう一度、カノトを抱きしめた。
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