第22章 吾妻悠生
「ま、マイキーくん…ゴールってこっちで合ってるんですか?」
「知らね。合ってんじゃねえ?」
「ええー!?」
「お!この部屋入れるみたいだぞ!」
「ま、待って…!」
楽しさが先走り、繋いだ手がパッと放れる。マイキーが先に部屋に入って行くのを見て、慌てて後を追いかけた。
「いない…?マイキーくん?」
部屋に入るとマイキーの姿が消えている。その部屋は廃病院の手術室のような場所で、ガラス棚や手術台、医療器具などが置いてある。それは本物の手術室のようなリアルさで、カノトは不気味に感じ、恐怖で顔が引き攣った。
「(こんなにリアルに再現されてるなんて…不気味。それに懐中電灯で照らしてないと真っ暗で何も見えない。マイキーくんの姿も見当たらないし…どこ行っちゃったんだろ?)」
早くお化け屋敷から出ないのにマイキーがいないんじゃ一人で置いて行く訳にもいかない。いや…それよりも一人でゴールまで辿り着ける自信がない。
「マイキーくん!どこにいるんですか!」
静まり返る部屋にカノトの声だけが響く。解けた手をギュッと握りしめる。
「いるなら返事してください…!!」
コツ…
「!」
後ろから足音が聞こえ、ビクッと体を跳ねさせる。コツ…コツ…っとゆっくり忍び寄る足音に心臓がバクバクと脈打つ。
「(マイキーくん?後ろにいるの?でも本当にマイキーくんならどうして話しかけてこないの?足音もなんか…違うような気が…)」
恐怖でマイキーの足音が判別出来ずにいた。カノトの呼吸が荒くなる。それでも意を決して、震える体で後ろを振り返り、懐中電灯の灯りで正体不明の何かを照らした。
「『お前の命を寄越せぇえ…!!』」
「っ!?…………ッッ!!!?」
ババンッと懐中電灯を照らした"何か"は長い黒髪に青白い肌、目は眼球がなく、口は頬まで裂けており、頭からは血が流れていた。
あまりの恐怖に言葉が出なかったカノトは懐中電灯を手放し、体の力が抜けて、その場にへなへなと座り込んだ。
すると幽霊が髪の毛を掴み、引っ張ると、ピンクゴールドの髪が現れる。青白い肌と眼球と裂けた口は特殊なマスクで作られており、それを剥がし、頭から流れる血は腕で雑に拭った。
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