第22章 吾妻悠生
満面の笑みを浮かべるカノトに胸がドキッとし、マイキーは頬を微かに紅く染める。
「だから女らしさ出してんじゃねー…」
「え?」
「今スグどこかの部屋に連れ込んでベッドに押し倒してちゅーしたくなんじゃん…」
「なッ!?駄目に決まってるでしょう!?」
「こんなに近くにいるのに手も繋げねェとか拷問かよ。触りたい…ぎゅーってしたい」
「さっきしたじゃないですか」
「あれだけじゃ全然足りねーの!!」
マイキーは不服そうに怒る。
「一回だけの約束だったでしょう」
「…一個我儘聞いて」
「ちゅーはもうしませんよ」
「まだ何も言ってねーじゃん!」
「マイキーくんの考えてる事なんて分かります。こんな人が多いところでキスしたら確実に変な目で見られるじゃないですか」
「カノはオレとちゅーしたくないんだ」
不貞腐れたようにマイキーはふいっと顔を横に背ける。面倒くさい拗ね方に短い溜息を吐き、手首の袖を軽く引っ張った。
「別にしたくない訳じゃないです…。でもこんな人の多い場所では…その…恥ずかしいというか…」
「じゃあ二人きりならちゅーしていい?」
「!………はい。」
真っ赤な顔で照れるように頷く。その返事に機嫌が直ったマイキーはニコニコと嬉しそうに笑う。
「ぎゅーもしていい?」
「…我儘が一個増えてますけど。」
「ちゅーとぎゅーのセットで我儘一個!」
「ズルくないですか?」
「でもカノなら叶えてくれんじゃん♪最初は渋々って感じだけど、最後はいつもオレの我儘全部聞いてくれる」
「……………」
「だから今回の我儘も聞いてくれるだろ?カノも嫌いじゃないもんな♪オレとそういう事すんの♥」
「仕方ないですから聞きますよ。拒否るとマイキーくん駄々捏ねるじゃないですか」
「カノに拒否られんのキライ♪」
「…本当に二人の時だけですよ?」
「分かってるって!」
「(本当に分かってるんだろうか…)」
Piii…
「!電話…?」
携帯を取り出し、相手を確認する。
「悠生くん…?」
「あ?誰、"ユーセイ"って。」
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