第22章 吾妻悠生
「めぐたんさんのお店に入った新しい人で、こないだ僕のクラスに転入してきた子です」
「ふーん…何でそいつがカノに電話掛けてくんの?」
「さぁ?もしかしたら急用なのかも」
「出んな」
「少し話すだけです。ね?」
「ヤダ」
鳴り続ける着信に煩わしさを覚えたマイキーはカノトの手から携帯を奪い取る。
「あ!ちょっと…!」
「(男から掛かって来ンのとか、すげームカつく。こいつもいつまで鳴らしてんの?出れないって分かったらすぐ切れよ。)」
"吾妻悠生"と表示された画面を見て、マイキーは苛立ったように顔をしかめた。
「マイキーくん!返してください!」
「今お前と一緒にいんの誰?」
「マイキーくんです…」
「オレとデート中なのにカノは他の男からの電話を取るんですかー?」
「でも…」
「"でも"じゃねぇよ。どうしても出るって言うなら、もうデート切り上げてさっさと帰る」
「え……」
カノトの顔がピシッと固まる。未だに鳴り続ける着信音に更にマイキーの苛立ちが募る。
「こいつもしつけぇな…。そうだ…オレが代わりに出て、言ってやろうか?」
「な、何を…です?」
「"カノはオレのモノだから、手ぇ出したら二度と外歩けなくしてやるよ"…ってさ。あーそれとも…いっそのこと、"こいつはオレの女だから、死にたくなかったら手出すなよ"とか。」
マイキーの低くて冷たい声とハイライトを無くした目に息を呑む。寒くもないのに寒気がした。カノトはマイキーが闇堕ちしないようにバッドエンドを回避する事にした。
「…分かりました。今はマイキーくんとのデート中ですもんね。電話には出ません。」
「分かればいいんだよ」
いつの間にか鳴り止んだ携帯を返される。
「さてと…それじゃ、早く二人きりになれる場所に行こっか♥」
「(マイキーくんの笑みがコワイ。どこに連れて行かれるんだろうか…。)」
内心不安に思いながらマイキーの後に続き、"二人きりになれる場所"に着いた途端、カノトの表情がサァァッと青ざめた。
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