第22章 吾妻悠生
「男にしては女ウケしそうな綺麗な字」
「"ウケ"を狙ってるつもりはないけど…褒めてくれてるならありがとう」
「また店手伝う予定ある?」
「いや、今のところないよ」
「カノトもあの店で働けばいいのに。知り合いいた方が嬉しいじゃん?」
「めぐたんさんの力になりたいとは思ってるよ。でも僕も忙しい時があるからさ。今回はどうしてもって頼まれたから手伝っただけなんだ」
カノトは黒板に書かれた内容を、ちんぷんかんぷんになりながらも必死にノートに書き写している友人を見る。
「カノトは友達思いなんだな。男からも人気あるだろ?」
「妬まれることが多いかな」
「俺ら勝ち組だもんな♪」
「別に勝ち組だからってワケじゃ…」
「男にモテたことある?」
「…何、その質問。」
「だって綺麗な顔してるからさ〜男にも告白されたことあンのかなーって」
「流石にないよ」
「ウッソだあ。お前めちゃくちゃ美人だし、女も男も引き寄せそうじゃん」
「…悠生くんは中々失礼なことを言うね」
「なぁ、もし俺がお前を気に入ったって言ったらどうする?」
「別にどうもしない。」
「うわぁード直球ぅ〜」
悠生は可笑しそうに笑う。
「じゃあさ、恋人にも向けてる笑顔を俺にも向けて欲しいって言ったらどうする?」
「断る。それは僕の恋人だからこそ自然と出る笑顔だから。他人が引き出せるとは思えない」
「ズバッと切り捨てるなぁ」
「あのさ悠生くん、さっきから何の質問してるの?今授業中だからこの話は終わりに…」
「俺、カノトのこともっと知りたいな」
「!」
「だから友達になってよ」
「別にいいけど…」
「やった♥」
「(…この人、何を考えてるんだろ。変な質問ばっかするし、男の私を気に入ったとか言うし…でも、本当に友達になりたいだけ、とか?)」
本心が分からない悠生にカノトは頭を悩ませる。
「(ま、いっか。それより今は授業に集中してノート取らなきゃ。)」
シャーペンを握り、黒板に書かれた内容を写し始める。その様子を悠生は横目でじっと見つめていた。
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