第22章 吾妻悠生
「そのヒトの事、大事にしてるんだね」
「大事にされてるのは僕の方。あの人はこっちが恥ずかしくなるくらい、好きっていう気持ちを隠さない人だから愛されてる実感しか感じない」
「(なーんか…悔しい。)」
マイキーの話をしている時のカノトは悠生が小さな嫉妬を覚えるほど嬉しそうに笑う。自分の中にある"それ"がどういう感情なのかはまだ気付いていないが、悠生は何故か悔しさが込み上げた。
「(男なのに何でこんなに気になるんだ?美人系の男なんてコイツだけじゃないのに…何故か目を奪われる。)」
じっとカノトを見て複雑そうな顔を浮かべる。
「いつか俺にも紹介してよ。カノトが大好きで仕方ない恋人。」
「う、うん…機会があれば。」
「約束な」
「(付き合ってる人が男だって知ったら悠生くん、どんな反応するかな。今の私は男装中だけど"男同士で?"とか思われて引かれそう。)」
「そーだ。カノト、連絡先交換しよ。今度一緒にどっか遊び行こうよ」
「あー…教えるのは構わないんだけど、二人で遊びに行くのは難しいかも」
「何で?」
「(私が男と一緒にいるだけでも嫉妬するのに…二人で遊びに行くなんて知ったらマイキーくんが絶対怒って拗ねる。)」
頭の中でそうなった時のマイキーを想像し、ぞわっと体を震わせる。
「(それに…また"あんな事"になったら今度こそ本気で閉じ込めそうだし。)」
首に手を掛けた感覚を思い出し、それだけは絶対にしてはいけないと強く思った。
「もしかして恋人がそういうの許さない?」
「えー…まぁ…」
「カノトの恋人ってそんなに束縛強いの?男と二人で遊ぶだけなのに?女だったら嫉妬すンのは分かるけどさ」
「恋人との時間を大事にしたい人なんだ。でも複数人で遊ぶのは大丈夫だよ。その時は僕の友達も誘うし」
「……………」
「えーと…ハイこれ。僕の携帯の番号とメアド。先生に見つかるとまずいからすぐしまってね」
「アリガト♪」
サラサラっと紙に連絡先を書き、四つ折りにして先生が見ていない間に悠生に渡す。彼はそこに書いてある文字を見て言う。
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