第22章 吾妻悠生
「むっかぁー!!おい宮村!!こいつ絶対俺のこと馬鹿にしてる!!つーか鼻で笑いやがった!!」
「笑ってない笑ってない☆」
「☆を付けて笑ってんじゃねーか!!」
「二人とも、先生が静かにしろって目で訴えてる。そろそろ落ち着いて」
「ったく…何でめぐたんはこんな奴を雇ったんだ」
「俺がイケメンだからっしょ。めぐさんは俺の良さが分かってるな〜」
「めぐさん言うなーッ!!」
「はぁ…二人ともいい加減にしようよ。ほら、先生がチョーク構えて今にでも投げ飛ばしそうな勢いだから」
目を光らせて片手にチョークを構えた先生を見た二人は口を噤んだ。それから授業が始まろうとした時、悠生がコソッと話しかけてきた。
「カノトの恋人もこの学校?」
「いや、他校の先輩。」
「え!?先輩と付き合ってんの!?」
「そんなに驚く?」
「や…意外だったっつーか…カノトならタメか年下と付き合ってそうなイメージだったから余計に驚いた」
「初めて言われたよ」
「なぁめぐさんから聞いたんだけど、恋人ってすげーお前のこと大好きなんだろ?」
「(めぐたんさん…余計なことを…)」
「しかも人前で平気で好きだって告白する大胆な奴なんだろ」
「…あながち間違いではない、かな。愛情表現がとてもオープンな人なんだ。ただ…普段の時とそうじゃない時の差にギャップがあるから見た人は驚くと思う」
総長をしている時のマイキーはとても近寄り難い雰囲気を放っている。だがカノトの前ではそれが嘘のように剥がれ落ちる。年相応の子供のように我儘を言い、カノトのことが大好きでベタベタに甘えてくる。一緒にいれば抱き締めたいし、キスもしたい。なんなら一日中イチャイチャしていたいのだ。
「めちゃくちゃ愛されてんじゃん」
「うん」
「(そんな綺麗な顔で笑うんだ…。)」
嬉しそうに笑ったカノトに悠生は驚いた。机に頬杖をし、どこかつまらなさそうに言う。
「ねぇ、その恋人のこと、好き?」
「大好き」
「!」
「って…なんか照れるなぁ。」
カノトは照れ臭そうに笑う。
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