第22章 吾妻悠生
「頭なんか下げなくていいよ。俺も急に触ろうとしてごめんな?」
悠生は申し訳なさそうに両手を合わせて謝る。
「すげー大事にしてんだね。彼女からのプレゼントとか?」
「まぁ…そんなところ」
"彼女じゃないけど"と心の中で呟く。
「しっかしカノトの彼女かー。きっとカワイイ系かキレイ系なんだろうな」
「そう言う悠生くんこそ、彼女いないの?」
「付き合った子は何人もいたよ。でも何故かすぐ別れちゃう。酷くねぇ?こんなイケメンをフるなんて絶対損してるよな!」
「悠生くんって派手だね。色々と。」
「それ、女遊びも含まれてるだろ…。まぁー見た目もこんなんだしなー。明るい金髪に片耳ピアス。でもこう見えて真面目よ?授業とかサボった事ねーし」
「へぇ。軽薄そうなのに意外だね」
「そういうカノトも優等生クンかと思えば、外見に反してとんでもない毒舌家だったなんて意外だよ」
「そう?素直に生きてるだけだよ」
「二人とも〜!そろそろお店開けるから準備して〜!」
「今行きます!」
ひょっこりと顔を覗かせためぐたんに言われ、カノトは小走りでホールに向かった。
「ねぇめぐさん」
「なぁに?」
「カノトの恋人見たことあります?」
「え?あー…うん。一回だけ。」
「どんなカンジの子っスか?」
「え〜そうだなぁ。めぐが嫉妬しちゃうほど二人は仲良しさんで〜…すごぉーくお互いを想い合ってて〜…なんならその子の方がみゃーむら君の事が大好き〜!!ってカンジ。」
「そうなんスね」
「まぁ…めぐはあんまり好きじゃないけど」
最後にボソッと小さく呟いた。
「でも人前でみゃーむら君の事が好きだって告白する大胆な子だよ!それに…」
「それに?」
「あの子からみゃーむら君はどう頑張っても絶対に奪えそうにないし…」
「!へぇ……。」
めぐたんは腕を組み、顔を横に背けると悔しそうに頬を膨らませる。
「ほら!悠生君も準備してね!」
「ハーイ」
めぐは忙しそうに去って行く。
「───……"どう頑張っても絶対に奪えない"……ね。」
それを聞いて悠生の口許が吊り上がった。
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