第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「すぅー…はぁー…」
佐野家に到着したカノトは玄関の前で緊張で高鳴る心臓を落ち着かせるように深呼吸をした。
「もしかしたらまだ寝てるかも…」
携帯を取り出し、マイキーの番号に電話を掛けた。
✤ ✤ ✤
Piii…
「すぅー…すぅー…」
お気に入りのタオルを握り締めながら気持ち良さそうにベッドで眠っているマイキー。着信が鳴っても気づかず、眠り続けていた。
Piii…
「ん"……んん〜……」
着信の音が煩わしそうに、眉をぐっと顰め、小さく唸る。それでも鳴り続ける着信音にイラッときたのか、寝ぼけ眼で携帯に手を伸ばす。
「誰だよ…こんな朝っぱらから…うるせぇな…」
寝ていたところを起こされた事で完全に不機嫌になったマイキーが一言文句を言ってやろうと、携帯を開いて相手を確認する。
「!カノ…?」
名前を見た途端、ぱっちりと目が開いたマイキーは驚きながらも、電話に出た。
「カノ〜?どーしたぁ〜?」
《すみません…寝てましたよね?》
「ん〜…寝てたけど朝からカノの声聞けたからいーよ。おはよ。」
《おはようございます、マイキーくん。》
「んーふふ…」
《?どうかしました?》
「カノからおはようって言われんの嬉しい…毎朝起こしてほしいなぁ〜」
《モーニングコールってやつですか。》
「そーそれぇ…カノが起こしてくれたら絶対起きる…一番最初におはようって言われたい…」
ぽやぽやとした喋り方に"半分夢の中で会話してるな…"と思い、さっさと用件を伝えてしまおうとマイキーに話す。
《あの…着てきたんですけど…》
「ん〜?着てきたってぇ〜…何を着てきたのー?」
《だから…………着物。》
「……………え?」
カノトの言葉に思考が一瞬停止する。
《マイキーくんがあまりにも見たいとせがむので…その…着付けて…今家の前に…》
言い終わる前にバッと勢い良くベッドから降り、バタバタと廊下を駆け出して、ガラッと玄関の扉を開けた。
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