第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「(兄さんがいた世界で、私は毎日が幸せだった。それがあの日、突然壊れてしまった。望んだはずの幸せが…一瞬にして、消え失せてしまった。)」
マイキーが未来先でも、一緒にいてくれる。幸せな世界で、大好きな人の傍にいられる。それはカノトにとって、望んだ幸せだった。だからこそ、彼女も恐いのだ。ずっと幸せだった世界が…何かをきっかけに、突然無くなってしまう事が。
マドカを突然失った悲しみは良く知っている。だからこそ、未来でも一緒にいてくれるマイキーとの幸せが壊れてしまったら…彼はどうなるのだろうかと。
現代のマイキーは大切な人達を次々に失くし、今の闇堕ちマイキーが出来上がった。想像はしたくないが、もし自分もその中の一人になってしまったら…彼は今まで以上にもっと、闇の底へと沈んでいって、二度と這い上がって来れないのではないかと。
「(私はもう二度と大切な人を失いたくはない。兄さんも傍にいると誓ってくれた。宮村の家から私を連れ出してくれた。兄さんがいたからこそ、世界は色付いて見えていた。)」
だからマイキーの言った"幸せすぎて逆に壊れそうで怖い"と口にした言葉を理解できた。自分も現代でマドカを失っている。幸せが一瞬にして壊された。その思いは今でも忘れられない。
「私も好きです、マイキーくん。貴方だけが大好き。だから…これからの時間を共に歩んでくれるなら…私を置いていかないでくださいね」
もう…独りはいやだから────。
「カノを置いていくわけないじゃん。オレはオマエを独りにするつもりはないよ。ずっとオレと一緒にいんの。ベタベタし過ぎてウザイって思われたとしても、絶対に離してなんかやらねぇ」
「あんまり引っ付きすぎると暑苦しい気もするんですが…」
「引き剥がされたら泣くよ?」
「本気で泣かないくせに」
「カノはオレに泣かされる事多いよな。色んな意味で♥」
「うるさいです…」
「カノ」
ふと静かに呼ばれ、マイキーを見る。
「オマエの幸せはオレが守ってやる。誰かがその幸せを壊そうとするなら、オレがそいつをぶっ飛ばす。だから…これからもオレの隣で笑ってろ」
返事の代わりに笑ってみせる。マイキーも同じように笑い返し、二人は歩き始めた。
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