第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「…あれ?もしかして照れてる?」
「照れてません…」
「でも顔赤いよ?オレとの結婚生活想像して恥ずかしくなっちゃった…とか?」
「っ、」
「あ〜図星だ♥」
「ニヤニヤしないでください!」
「ははっ怒んなって♪な、どんなの想像したの?参考にするから教えて」
「参考って…何の参考ですか」
「そりゃオマエとの将来に決まってんだろ」
「え!?」
「…えって何?オレはオマエと別れるつもりで付き合ってる訳じゃねーんだけど。この先もずっと大事にしたいから一緒にいるんじゃん」
「……………」
「オレ、好きになった時からオマエ一筋だよ?でもカノには伝わってなかったか〜」
マイキーが乾いた笑みを洩らす。予想もしてなかった言葉に目を見開き、驚きのあまり足を止める。
「(この先もずっと…)」
「言ったよな?オレの傍にいてくれるって。オマエはもうオレだけのモンなんだから、勝手に離れたら許さねぇ。だからさ…」
繋がれた手を掬い上げられると、マイキーは手の甲に口付けを落とす。甲に唇を押し当てたまま、目線だけをじっと向けられ、カノトはドキッと鼓動が跳ねた。
「オマエの未来、オレにちょうだい?」
柔らかく微笑まれ、思考が一瞬停止する。未来が欲しいと口にしたマイキーはその答えを待つかのように、カノトの目を真っ直ぐ見た。
「好きだよカノ、すげぇ大好き。」
「っ…………」
手に触れたぬくもりから伝わる優しさ。言葉の中に込められた甘い囁き。自分を愛おしげに見つめる瞳。マイキーの全身から感じる。カノトを心の底から幸せにしたいという想いが。
「───……はい。」
涙で視界がぼやける。もっと他に言う言葉があるはずなのに…嬉しさのあまり、そう返事を返す事しかできない。
「私の未来、マイキーくんにあげます。だから…例え望んだ幸せが壊れたとしても、私とずっと一緒にいてください」
現代でマドカが死んで、ずっと独りぼっちだった。朝起きて仕事に行って、家に帰って来て美味しくないご飯を一人で食べて、大して面白くもないテレビ番組を退屈そうに見て、寝れない夜を過ごして、また次の朝を一人で迎える。そんな空っぽな世界で生きてきた。
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