第20章 望んだ未来の"もしも"の話
初詣の帰り道、約束通り、手を繋いで帰れば、マイキーのご機嫌がすこぶる良かった。
「なぁなぁ!もしオレと結婚したらさ!おはようのちゅーと、おやすみのちゅーは毎日絶対欠かさずしような!あと、ご飯も一緒に食べて〜お風呂も一緒に入るだろ?ソファーで二人でくっついて座ってココア飲みながら好きなテレビ番組見ンの!んで!寝る時はカノをぎゅ〜って抱きしめながら寝る!」
「(さっきからずっとこのテンションで私との結婚生活の妄想をしている。)」
「大好きな奴と一生一緒にいられるなんてさ、それってすげぇ贅沢で幸せな世界じゃね?」
「流石に一緒にお風呂には入りませんよ」
「何で!?」
「狭いじゃないですか」
「狭い方が後ろから抱きしめられンじゃん」
「…抱きしめるだけで終わらないから言ってるんです」
「何?オレにえっちな事されるかもって?」
「外でそういうこと言わないでください…」
「お風呂えっちもシたいなぁ。でも防音対策しとかねぇとオマエの声響きそうだし、そこも踏まえて家探したいな♪」
「っ!何言ってるんですかもう…!!」
真っ赤になった顔で怒れば、マイキーは可笑しそうに笑う。"あとアヒル隊も買う!!"と言われ、いつかのアヒル隊を思い出した。
「けどさ…そんな幸せな毎日が続いても、始まりがあるのと同じで、いつかは終わりがあるんだよな」
「!」
「それを想像すると、逆に怖いな…」
「…マイキーくん」
「今ももちろん幸せだ。だからこそ…今あるその幸せが、気づかないうちに壊れ始めてたら、オレは怖い。」
「("今ある幸せ"…)」
悲しげに伏せられたマイキーの瞳を見て、カノトは現実を突きつけられる。
「(マイキーくんとの未来が手に入るなら、それは私にとって、世界一贅沢な幸せだ。でも…彼の言う通り、始まりがあれば、必ず終わりがある。その失いたくない『幸せ』が壊れて無くなった時、私は…)」
「カノは?」
「え?」
「オレと結婚したら、こういう毎日を送りたい!ての…ないの?」
「!」
マイキーとの結婚と聞いて、自然と顔が紅くなる。一瞬でも、想像してしまった。叶うかも分からない、彼との結婚生活を…。
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