第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「オレのエマ?オレの"エマ"って何よ?」
「おっ、タケミっち」
「『オレのエマ』ってコレ?」
「あー!!返してください!!」
「うん、必死だね。ハイ!落ちてたんだよ」
地面に落ちている絵馬を拾い、タケミチに渡すマイキー。
「千冬くん達までいる」
「オマエも初詣来てたんだな」
「うん」
「…やっぱ袴か」
「え?」
「何でもねぇ」
じっと袴を見られ、何かと思えば少し残念そうに呟かれた。"まさか千冬くんも…"と言いかけたところで、周りの人達が騒ぎ出す。
「なんだなんだ?」
「年が明けるまであと10秒みたい」
「みんな飛ぶぞぉ」
「え?え?」
「3!!」
「2!!」
「1!!」
みんなが一斉に飛んだ。
「ハッピーニューイヤー!!!!」
タケミチの絵馬が宙を舞う。"みんなを救えるヒーローになれますように"───それがタケミチが絵馬に込めた願い事だった。
✤ ✤ ✤
とある場所にて───。
「まさかタケミっちがこんなにやるとはなぁ、意外。」
「………、こんなんで終わらせねぇよ。それより…アイツの事はもう諦めたのか?」
「ん?」
「あの時の集会で宮村カノトと目が合ったのにオマエ逸らしただろ。てっきり興味が失せたのかと思った」
稀咲に言われ、半間は先程よりも笑みを深くしてニヤリと笑った。
「オレが勇者チャンを諦める?アハ♪冗談言うなよぉ稀咲ィ。あン時そうしたのは"わざと"だ。こっちから興味ねェ振りを見せれば、"自分にはもう興味が無くなったんだ"と勇者チャンは思い違いをする」
「……………」
「その油断がどんなに危険か、優しい勇者チャンは分かってねェ。オレが勇者チャンを諦めるとか死んでもねェわ♪何か…マイキーと引き離す"きっかけ"みたいなのがあれば…そこを狙う」
「オマエが男にそこまで執着する意味が分からねぇな。宮村がオマエのモノにならなかったらどうするつもりだ?」
「稀咲には勇者チャンの良さは分からねェよ♪もし勇者チャンがオレのモノにならなかったら…オレのモノになるまで、何度だって勇者チャンを追いかけて捕まえるまでだ♥」
半間は歪んだ笑みを浮かべた。
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