第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「それにしても凄い人の数ですね」
「引き離されンなよー」
「この人混みで迷子になったらアウトだな」
「エマちゃん、気をつけてね」
「うん」
「いやオマエもだからなカノ」
「そーそー。カノはしっかりしてそうに見えてどこか抜けてるからな〜」
「二人とも酷いです…」
「手繋ぐ?」
「今はダメです」
「ちぇっ」
「あ!絵馬がある!」
「"エマ"はオマエじゃん」
「違くて!こっちの"絵馬"!!」
マイキーに"何言ってんの?"みたいな顔で言われたエマは"そうじゃなくて"と怒り、絵が描かれた木の板を指差す。
「へぇー書いた事ねェかも」
「願い事が叶うとも限らねーしな」
「夢にも無いことを…」
「ねえ!みんなで書こうよ!」
「せっかく来たんだし書いとくか」
「そーだな」
それぞれマジックペンを持ち、購入した絵馬で願い事を書き始める。
「(願い事か…叶うといいな。)」
"みんなが笑って暮らせる幸せな世界にしたい"
「(ありきたりな願い事だけど…私が望む未来はハッピーエンドで終わりたい。)」
「書き終わった?」
「はい」
「なんて書いたの?」
「…マイキーくんは何をお願いしたんですか?」
「オレはコレ!」
「"不良の時代を創る"…マイキーくんらしい願い事ですね」
少し下手な滲んだ字でそう書かれている。彼の夢はいつまでも変わらない。"不良の時代を創る"。実に彼らしいと思った。
「で?カノは何を神様にお願いしたの?」
「えーと…こういうのって人に見せたら叶わなくなるって言うじゃないですか」
「ならオマエに見せた時点でオレの夢は叶わなくなるって事じゃん!先に言っとけよ〜!」
「す、すみません。というか勝手に見せてきたのマイキーくんじゃ…」
「オマエに見てもらいたかったの!オレが見せたんだからカノのも見せて!」
「いやいや、大した願いじゃないですから」
書いた面を見られないように胸に押さえつけて隠せば、変に勘違いしたマイキーがむっと顔をしかめた。
.