第20章 望んだ未来の"もしも"の話
エマと言い合っていたはずのマイキーが二人の仲良さげな雰囲気に気付いて、むっと顔をしかめると、ドラケンと話をしていたカノトの腕を軽く引っ張った。
「ケンチンとあんま仲良くすんのダメ!」
「何を言ってるんですか」
「男はみんな狼なんだよ!カノはマジで危機感無さすぎ!!もしケンチンがオマエのこと好きになって襲ったらどーすんだよ!」
「あのなぁマイキー…てめぇはオレをどういう目で見てンだ。つーかコイツを襲うのはオレじゃなくてオマエだろうが!」
「もう襲ってるし!!」
「…へぇ?」
「マイキーくん!!」
驚いたドラケンがちらりと横目で顔を真っ赤にさせたカノトを見た。ドラケンの何か言いたげな視線を体中に感じながらもマイキーの発言にわなわなと体を震わせる。
「てめぇの方がよっぽど狼だろうが。」
「赤ずきんが可愛くて♥」
「はぁ…総長としての威厳はどこ行ったんだよ」
「今総長としてここにいねーもん」
「あの二人とも…そろそろ行きましょう。エマちゃんが頬を膨らませてあっちで待ちくたびれてます」
カノトの視線を追うと、少し離れた場所でエマが一人、頬を膨らませてこちらをじっと見つめている。
「もう三人とも!!いつまで話してるの!?早く行かないとカウントダウン始まっちゃう!!」
「おー」
首に手を遣りながらドラケンが歩き出す。それに続いてカノトが歩こうとすれば、袖を軽く掴まれた。
「どうかしました?」
「他の男とあんま楽しそうに話すなよ…」
「楽しそうに話してましたか?」
「オレに向ける笑顔とおんなじのケンチンにも向けてた。カノの笑顔はオレだけのモノなんだから、簡単に笑い掛けちゃダメ」
「全然気が付かなかったですけど…さすがにマイキーくん以外に笑いかけるなって言われると無理だと言うしかないのですが…」
「ケンチンが本気で惚れたらどーすンの」
「それはないと思います」
「何で肯定できんの?カノは自分の可愛さ理解してねェの?もしかして自分は全然モテないって思ってる?」
「多少はモテますけど」
「は?誰に?男?」
「いえ、女の子達に」
「じゃあ許す。」
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