第20章 望んだ未来の"もしも"の話
「ちゅーしてくんねェと…」
「(今度は何…?)」
「オマエが女だって言いふらす」
「言いふらされると困るんですが」
「じゃあオレとちゅーしろ」
「結局マイキーくんがしたいだけじゃないですか…」
子供のように拗ねてむくれて機嫌が悪くなるマイキーに再び溜息を吐く。
「手を繋いだ意味ないじゃないですか」
「手繋いだらちゅーもしたくなった」
"だからしよ?"
マイキーはそう言って体を寄せてきた。
「本当に諦めが悪いですね…」
「本気で嫌なら突き飛ばせ」
「…できないの知ってるクセに」
「うん…だってカノ、オレの事大好きだろ?だから突き飛ばしたりしねーの知ってる」
「……………」
図星で何も言い返せないでいると、マイキーはクスッと小さく笑う。
「カノの愛が足りなくて元気ねぇの。オレにオマエの愛を分けて。元気にしてよ」
「さっきまで元気だったじゃないですか…」
「ちゅーしてくんないって言ったから元気なくなった。神社まで持たないかも。カノがちゅーしていいよって言ってくれたら一発で元気になるのになぁ」
「(わざとらしい言い方…)」
「カノの愛でオレを満たして」
ニコッと笑うマイキーにカノトは肩を竦めて降参する。このままでは拉致が垢ない。マイキーの我儘は拒否したら長引く。彼は何より大事な彼女に拒否されたり、構ってもらえないのが一番嫌いなのである。
「…いいですよ」
「やった!!」
「ただし!一回だけ、です。」
「えー……」
「マイキーくん…?」
「一回、な。分かった。」
黒い笑みで笑えば、マイキーはすぐに承諾してくれた。腰に両手を回され、体を抱き寄せられる。
「(人が通りませんように。)」
「そんな気になる?」
「当たり前じゃないですか…」
「今オマエといんのはオレだろ。他の事に意識向ける余裕あんなら、オレのことだけ見てろよ」
「!」
さっきまで子供っぽい態度だったマイキーが急に真剣な顔つきになり、そのギャップに思わずドキッとしてしまう。
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