第2章 無敵のマイキー
「君たちのタイムリープの能力は“12年前の同じ日に戻る”。例えば今日過去に戻ったとしたら“12年前の今日”に着き、12年前の1週間後からこっちに帰ってくれば現在も1週間経っているという事です」
ナオトがホワイトボードを使って説明してくれる。
「つまり過去に戻っている1週間、この間は君たちの意識は過去に行っている。“空の器”だけが現在に残っていたわけです」
「それで仮死状態ってわけなんだね」
「ええ。タイムリープする時はボクの部屋にしましょう」
「確かに!外でいきなりぶっ倒れたくねえしな」
「あの…私も一つ分かったことがあるの」
「何ですか?」
「私が“こっちに帰ってくる条件”はタケミチくんの傍にいなくても大丈夫らしいの」
「え?」
「タケミチくんがナオトくんと握手すると私はどこにいても強制的に戻される。今回がそうだった」
「なるほど…。行く時はタケミチ君が近くにいる事が条件。でも戻る時はタケミチ君が握手を交わした時点でカノさんがどこにいても強制的に現代に戻される」
「マジか」
「新たな発見だね」
両手を合わせて笑った。
「で──結局、話を戻しますが。“佐野”と“稀咲”、二人を出会わせないミッションはどうなったんですか?」
「えっとマイキー君とは会ったよ」
「マイキー?」
「佐野くんのアダ名だよ」
「聞いてよナオト…マイキーは不良だけどいい奴でさ」
「は!?なんで殺さなかったんですか?」
「へ!?」
「やだナオトくん物騒」
「姉を殺した奴が“いい奴”!?過去で言いくるめられたんですか!?」
「違っ───」
「いいですか!?その“マイキー”は今、あらゆる犯罪に手を染めて警察でも手に負えない男ですよ!?」
「ナオトくん、ちょっと落ち着い…」
「できる事ならこの手で殺してやりたい」
「ナオトくん…」
「ナオト…マイキー君に会おう!」
「!!」
「タケミチくん…」
「そんなの絶対駄目ですよ!!」
「本人に会って直接聞いてみたいんだ」
「何を聞いても一緒ですよ!」
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